モノトーンの肖像画

アクセスカウンタ

zoom RSS 【明治の50冊】(19)内村鑑三「代表的日本人」 若い知識層に説いた「天」

<<   作成日時 : 2018/11/03 22:14   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 明治150年にあたる平成30年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 5人の評伝が収められている。西郷隆盛、上杉鷹山(ようざん)、二宮尊徳、中江藤樹(とうじゅ)、日蓮。なぜこの5人を取り上げるのか、そしてどんな人物として描いているか−というところに、著者の内村鑑三が「日本」と「日本人」をどう見ていたかが表れる。
画像
内村鑑三

 例えば、引用される西郷の言葉はこうだ。〈文明とは正義のひろく行われることである。豪壮な邸宅、衣服の華美、外観の壮麗ではない)〉
 あるいは、極貧状態だった藩を立て直した鷹山が行った社会改革。その美点として特記されるのは〈家臣を有徳な人間に育てることに置いたところ〉。
 尊徳も地域に繁栄をもたらした経済改革の担い手として描かれるが、強調されるのは「仁術」や「道徳心」。全財産を放棄するように名主を説得したエピソードなどが紹介され、〈舶来の「最大多数の最大幸福の思想」に、まだ侵されていない真正の日本人があった〉と記す。
 「西洋からいろいろなものを取り入れていた時代に、日本の中にも良いものはある、こういう日本人であってほしいという願いが感じられる」
 内村の研究者で岩波文庫版の翻訳者でもある鈴木範久さん(立教大名誉教授)は、そう評する。
画像
鈴木範久さんが翻訳した岩波文庫版

 原文が英語で書かれているので、新渡戸稲造の『武士道』、岡倉天心の『茶の本』と並べられることが多いが、日本文化の発信を目的にアメリカで出版された2冊とは少し性格が異なる。刊行は民友社。国内向けだった。
 「もちろん外国人にも…とは思っていたでしょうが、当時の学生は英語も当たり前に読めた。想定していた読者は日本の若い知識層だった」(鈴木さん)
 内村の視点には、西洋文明への批判と、それを安易に受容する日本人への警告が含まれている。印象に残るのは「天」という言葉だ。「敬天愛人」「天意」「天道」「天の法」…各章で繰り返し強調される。内村はキリスト教信者だが、神仏を超えた、もっと普遍的なものとして「天」を想定している。
 「『お天道さまが見ている』というときの天に近いかもしれないですね。人々に生きる使命をもたらすもの」(同)
 執筆時の内村は、教育勅語に最敬礼しなかったという、いわゆる不敬事件(明治24年)で教職を失い、困窮生活の中にあった。「国賊」扱いされる弾圧的な苦境のなかで、「日本人の美徳」を描き出した。

 内村の代表作の一つとして版を重ね、読み継がれている。ドイツ語版なども刊行された。現在も「道徳教育は、これ1冊をやっておけば十分」などとたたえる読者カードが届くそうだ。鈴木さんは言う。「時代を超えて通用するし、広がりがある。いま読んでも何の不自然さもない」
 日清戦争中の明治27年に『日本及び日本人』として刊行された本を、41年に改訂再版するとき、内村は題名を変えた。無私の精神を貫き、世の中に尽くした希有(けう)な偉人を「代表的」と呼んだことに、願いがこめられているようでもある。
 〈わが国に対する愛着はまったくさめているものの、わが国民の持つ多くの美点に、私は目を閉ざしていることはできません〉(篠原知存)
 次回は25日『日本昔噺』(巖谷小波(いわや・さざなみ))です。
【プロフィル】内村鑑三
 うちむら・かんぞう 万延2(1861)年、江戸生まれ。札幌農学校時代にキリスト教信者となる。思想家、著述家として活動。既成の教派にとらわれない「無教会主義」を提唱した。日露戦争では非戦論を唱えた。著書に『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』『求安録』など。昭和5年、69歳で死去。

*2018.06.18 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180618/lif1806180017-n1.html)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

天気予報


コアラのマーチ


AKB48ブログ集

© AKB48ブログ集
【明治の50冊】(19)内村鑑三「代表的日本人」 若い知識層に説いた「天」 モノトーンの肖像画/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる