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zoom RSS 【明治の50冊】(13)西郷隆盛「南洲翁遺訓」「敬天愛人」に秘めた凄み

<<   作成日時 : 2018/09/15 23:44   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 明治維新の立役者ながら、西南戦争に敗れ逆賊として最期を迎えた西郷隆盛。死後13年を経た明治23年に刊行されたその語録『南洲翁遺訓(なんしゅうおういくん)』は、名高い「敬天愛人(けいてんあいじん)」の言葉をはじめ、著書を残さなかった西郷の思想を具体的に伝える唯一の書物だ。
 今年の大河ドラマの主人公となるなど、現在も衰えない人気を持つ西郷。その人望は、存命中からすでに絶大なものがあった。
画像

西郷隆盛肖像(国立国会図書館蔵)


 本書の一風変わった成立事情からして、西郷の人格的魅力抜きには成り立たない。実はこの語録を編んだのは薩摩人ではなく、戊辰戦争で奥羽越列藩同盟の一員として西郷と敵対した旧庄内藩の関係者なのだ。
 開戦のきっかけとなった江戸薩摩藩邸の焼き打ちを実行した庄内藩は、敗戦後に厳しい報復を受けることを覚悟していたが、官軍の処置は予想に反して非常に寛大だった。これが西郷の指示によるものと知った庄内藩士たちは感銘を受け、旧藩主自らが鹿児島の西郷の下に赴いて薫陶を受けるなど親しく交わった。この際に彼らが聞いた話をまとめて、明治22年の大日本帝国憲法発布時の大赦で西郷が名誉回復された後に書籍として刊行したのが『南洲翁遺訓』だ。

 以後、戦前から現在に至るまで、解説や現代語訳を交えたさまざまな版が出版された。今も岩波文庫『西郷南洲遺訓』や角川ソフィア文庫『新版 南洲翁遺訓』、中公クラシックス『大西郷遺訓』など、各出版社が独自の編集を施した版を刊行し続けている。

 遺訓本文は全41カ条と追加2条からなり、原文のみを記せば文庫本で15ページ程度に収まるごく短い分量だ。内容は為政者のあるべき姿勢や日本の文明化の方向性、人として行うべき道など、西郷の国家観や人間観が端的に語られている。
 「道は天地自然の物にして、人は之(これ)を行ふものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛し給ふゆゑ、我を愛する心を以て人を愛する也(なり)」(24条)
 シンプルな記述ゆえに、現代人がうっかり読むとただ平板な道徳的メッセージとして解釈してしまいかねない。だが同書に詳しい先崎彰容・日本大教授(日本思想史)は「単に人生教訓として表面的に読むのではなく、西郷がどんな儒教の教育を受けて、いかにそれを血肉化していたかという背景に目を向けなければならない」とくぎを刺す。
 「人を愛するといっても、立場の違いで激しく殺し合った時代状況では、非常に困難なもの。だから最初に『敬天』が必要になる。天というのは儒教特有のある種の宿命論で、眼前の人間社会があまりに殺伐としているからこそ、それを超えた存在を考えなくてはならなかった」

 陽明学の影響を深く受けた西郷の言う「天」とは、社会において自分が何をなすべきかという宿命の自覚を促す存在だった、と先崎教授は指摘する。昔の聖人や賢者の書を単に知識として学ぶだけでは、どうしようもない。いまや危機の時代である。実践と行動こそが重要であり、それは眼前で崩壊しつつある日本社会の秩序を再構成することだ−。その思想が有名な「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末(しまつ)に困るもの也。此(こ)の仕末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり」(30条)との言葉にもつながってくる。
 「敬天愛人」という一見穏やかな言葉の背後にひそむ、何もかも捨てて行動に邁進(まいしん)することを促す尋常ならぬ激しさ。そのことに思い至るとき、茫洋(ぼうよう)として優しげな風貌の「西郷どん」が秘めた凄(すご)みが見えてくる。(磨井慎吾)
 次回は23日『真善美日本人』『偽悪醜日本人』(三宅雪嶺)です。
【プロフィル】西郷隆盛
 さいごう・たかもり 文政10年12月(1828年1月)、薩摩(鹿児島県)の下級藩士の家に生まれる。号は南洲。藩主の島津斉彬(なりあきら)に登用されて頭角を現し、失脚を経つつも討幕運動の中心人物となって薩長連合や王政復古、江戸城無血開城などを成し遂げる。新政府では陸軍大将、参議を務め、廃藩置県や徴兵制導入を実現するが、明治6(1873)年の政変で下野。10年、鹿児島で挙兵し西南戦争を起こすが、政府軍に敗れ自刃した。

*2018.04.16 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180416/lif1804160011-n1.html)

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