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zoom RSS 【明治の50冊】(21)内村鑑三「余はいかにしてキリスト信徒となりしか」 西洋と対峙した魂の遍歴

<<   作成日時 : 2018/11/25 23:06   >>

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 明治150年にあたる平成30年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 内村鑑三の半生記である『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』の原題は『HOW I BECAME A CHRISTIAN』。アメリカで刊行することを企図して英語で書かれた。なぜアメリカで?
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警醒社から刊行された『HOW I BECAME A CHRISTIAN』(北海道大学付属図書館蔵)

 その淵源(えんげん)は宣教師大会という伝道ショーでの体験に求められる。札幌農学校時代にキリスト教徒となった内村は明治17年、23歳で単身渡米し、半年ほど養護院の看護人として働いたのち、新島襄の勧めでアマースト大に入る。温かく迎えた学長はある日、宣教師大会に内村を連れ出す。そのときの様子を、内村はこう記している。
 《このショーで最もひどい目にあうのは、たまたまその場に居合わせ、異教徒からの改宗者の見本となる人々です。…彼らは見世物(みせもの)として壇上にひっぱり出されます》
 引っ張り出された内村は、改宗の理由を15分以内で話すよう求められる。そんな短時間で魂の重大な変化を語ることは不可能だった。その代わり、誠実につづった魂の遍歴をアメリカで出版しようとしたのだ。

 ところが、アメリカの病んだ社会の様子を率直に描いたためか、同国ですんなりと出版されず、まず日本のプロテスタント超教派出版社である警醒社から刊行された。28年のことだ。その翌年にアメリカで500部が発行されるが増刷されることはなかった。ところが日露戦争後、欧州諸国の関心が日本に向けられたことも手伝って、ドイツ、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、フランスなどで相次いで翻訳出版され、ドイツでは1万部以上が発行された。日本語版は初版刊行から40年後の昭和10年に弟子の鈴木俊郎の訳で岩波書店から出版され、3年後に岩波文庫に。文庫版は、一昨年に絶版となるまで78刷約25万部が発行された。
 『内村鑑三』(文春学藝ライブラリー)を著した文芸批評家の新保祐司さんは「武士の子として生まれた明治の青年が西洋とまともにぶつかった魂の遍歴」と同書を評する。
 「明治時代、日本人は西洋文明を支えるキリスト教とは適当に距離をおきながら付き合ってきた。ところが内村という誠実な人間は、これとまともにぶつかり、渡米の経験を経て、ついにはパウロのキリスト教(無教会主義)にまでさかのぼっていったのです」

 内村が「キリスト教の聖地」と理想化していたアメリカは、日本では想像できぬ人種差別や犯罪がはびこり、キリスト教はさまざまな教派に分かれ、世俗化していた。こう記す。
 《その病める姿こそ、実はキリスト教国を生かしている生命力を証しているのではないでしょうか》
 アメリカが病みながらも生き続けているのは、世俗化していようが、キリスト教が有する本来の力のおかげだというのだろう。
 3年半のアメリカ滞在を終え、帰国船の客となった内村は、南十字星を見上げながらこう決意する。
 《私は主を見いだし、主はただちに主の戦場に赴けと命じたのです! これは武士の家に生まれた者の定めです。不平を言わず、ありがたく思いましょう》
 新保さんはいう。
 「誠実であろうとした明治の青年の宿命的かつ圧倒的なドキュメンタリーです。そしてこうも思います。ドイツにルター、デンマークにキルケゴールがいたように、日本には内村がいた」(桑原聡)
 次回は、16日『たけくらべ』(樋口一葉)です。
【プロフィル】内村鑑三
 うちむら・かんぞう 万延2(1861)年、高崎藩士の家に生まれる。札幌農学校でキリスト教に入信。生涯を2つのJ(イエスと日本)にささげると誓う。23歳で渡米。アマースト大、ハートフォード神学校で学ぶ。帰国後、第一高等中学校の嘱託教員となるが、教育勅語奉読式で「不敬事件」を起こし辞職。いくつかの学校の教員をへて著述家として立つ。日露戦争では非戦論を唱え、明治33(1900)年に「聖書之研究」を創刊、誌上と集会で無教会主義のキリスト教を説く。晩年はキリスト再臨運動に没頭し、昭和5(1930)年没。

*2018.07.02 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180702/lif1807020011-n1.html)

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