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zoom RSS 【明治の50冊】(20)巖谷小波「日本昔噺」 受け継がれる「お伽式」

<<   作成日時 : 2018/11/10 23:56  

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 明治150年にあたる平成30年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 『日本(にっぽん)昔噺(むかしばなし)』シリーズは、日本で初めて昔話を子供のための読み物として書き換えた作品だ。作者の巖谷小波(いわや・さざなみ)は明治24年、日本初の創作児童文学『こがね丸』を、当時の新興出版社であった博文館から刊行している。黄金丸という犬が親の敵を討つ話で、しゃれや機知に富んだ巧みな語りで大ベストセラーになった。
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巖谷小波

 その成功を受け、博文館の求めで『日本昔噺』に取り組み、第1作「桃太郎」を27年に刊行した。坪内逍遥が書いた序文には、「寓意の明(あきらか)ならざるを咎(とが)むる勿(なか)れ」とある。
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明治29年に刊行された第6版(国立国会図書館 国際子ども図書館電子展示会「日本の子どもの文学」から転載)

 明治5年に学制が発布され、子供たちは教科書で知識を学ぶようになった。白百合女子大非常勤講師(児童文学)の中川理恵子さんは、「当時、子供の読み物は分かりやすい教訓(寓意)が含まれるべきだという意識が強かった」と話す。そうした風潮の中、子供は子供らしくという考えから小波は、子供が楽しめる純粋な読み物を目指したのだ。
 「むかしむかし在る処に、爺と婆がありましたとさ」と始まり、「爺は山へ柴刈に、婆は川へ洗濯に」というおなじみの話だが、情景や心理描写が入る書きぶりがユニーク

 時は夏の初旬。「岸の柳は藍(あい)染の総(ふさ)を垂した様」で、お婆さんは「汗染みた襦袢(じゅばん)や着古した単衣(ひとえ)」を洗う。また、お爺さんが桃を包丁で真っ二つに割りかけると、中から「お爺さん暫(しば)らく待(まつ)た!」という声がして、桃が左右にさっと割れる。鬼が島へ向かう犬や猿が、初めて大海を見ておじけづいてしまうくだりなども楽しい。
 「耳で聞く昔話と読み物はまったく異なる文芸スタイル。口承文芸では、桃太郎は桃の中でどうやって生きていたのかなどとは考えないが、小波は神様が遣わした子ということにして子供の疑問に答えている」(中川さん)
 「猿蟹合戦」「舌切雀」「物臭(ものぐさ)太郎」などを書き継いだシリーズは好評を博し、全12冊の予定が24冊になり、29年に完結した。原稿料も1冊5円から10円に値上げされたという。
 小波は36年と41年に『日本昔噺』を書き改めている。改訂版の巻頭には、各編20版内外を重ねたことに謝意を示しつつ、「面白く書きたいばかりに余計な修飾などを加えたため、子供に難しいところもあった」と改稿の理由を記す。
 小波は子供たちのために「お伽噺(とぎばなし)」と題した口演をしてきた。中川さんはこの経験も反映されていると推測し、「常に現実の子供を見て、どんな話だったら楽しめるか考え続けた人だった。また、嘘らしい嘘、今でいうファンタジーを信じられる子は、将来、大きな理想を掲げられる子になると語っているのが、小波の素晴らしいところ」と評する。40年発表の雑誌記事では、子供が空想に走り、鬼が島征伐などを真実の話として楽しんでいるなら、これを打ち破らないでほしいと書いている。

 小波の『日本昔噺』は現在、平凡社の東洋文庫に収められているが、子供の手に渡ることはまずないだろう。中川さんは、「昔話のパロディーとして楽しむことができる年長者向けかもしれない」と話す。それでも、子供たちが受け入れやすい形を追求した小波の文学スタイルは今も残る。テンポよく話を進め、反復を用いてリズムを持たせ、擬態語や言葉遊びを駆使した「お伽式」の書き方は、今も広く児童文学に受け継がれている。(永井優子)
 次回は7月2日『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』(内村鑑三)です。
【プロフィル】巖谷小波
 いわや・さざなみ 明治3(1870)年、東京生まれ。本名・季雄(すえお)。20年、17歳で尾崎紅葉らの文学結社、硯友(けんゆう)社に入り、漣(さざなみ)山人(さんじん)の筆名で小説を発表。24年に博文館の少年文学シリーズの第1編として『こがね丸』を発表。「少年世界」など多くの子供向け雑誌の主筆を務めるかたわら、『日本昔噺』『日本お伽噺』『世界お伽噺』などのシリーズをまとめた。昭和8(1933)年、63歳で死去。

*2018.06.25 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180625/lif1806250018-n1.html)

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