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zoom RSS 【明治の50冊】(15)幸田露伴「五重塔」語りの海にのまれる心地よさ

<<   作成日時 : 2018/09/30 14:20   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 「知の巨人」ともいわれた幸田露伴が24歳で著した代表作「五重塔」。それぞれ仏師、刀鍛冶を描いた「風流仏」「一口剣(いっこうけん)」に続く芸道小説で、自然主義文学誕生前の文壇をわかした。
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「五重塔」を収録した『小説尾花集』の表紙

 腕は確かだが、世事にうとく頑固一徹、緩慢な動作からあだ名も「のっそり」の大工・十兵衛が主人公。東京・谷中の感応寺で五重塔建立の話に、寺の普請も手がけ、塔の見積書まで出した親方筋の源太を差し置き、十兵衛が〈私にさせていただきたい〉と寺の朗円上人に直訴する。
 どちらかが主となり、2人で建てようとの源太の申し出を十兵衛は聞き入れず、潔く退いた源太が提供を申し出た下絵図や見積書も受け取らない。怒った源太の子分が十兵衛に大けがを負わせるも、〈一日なりとも仕事を休んで職人どもの上に立てるか〉と精を出す十兵衛。職人たちもこれに応えて五重塔は無事完成する。だが、落成式を前に暴風雨が塔を襲い…。
 「自作の由来」(明治30年)によれば、露伴は執筆当時、谷中に住み、朝夕目にする天王寺(旧名・感応寺)の五重塔に風情を感じていた。また、知人の倉という大工から聞いたさまざまな職人−「のっぽり」のあだ名の大工、数々の堂塔を建てた名工・越後の源太ら−の話、さらに倉も欲や処世の才はないが技術はすこぶるあり、〈倉と云(い)ふ男を幾分かモデルに〉物語を組み立てたという。

 作品は新聞『国会』で24年11月から25年4月まで連載。中断も多かったが、反響は大きく、同年1月17日の紙面では〈五重塔の仕末はやくせよ…と讀者諸君よりの御叱言(おこごと)も畢竟(つまり)は作者を御贔屓(ごひいき)の余りと嬉敷(うれしく)〉と記している。とくにクライマックスの暴風雨の描写が荘厳、迫力ある名文として語り継がれ、「(この)一篇だけでも、露伴の地位は不朽だとさへ推賞された」(日本文学大辞典、新潮社)。
 同作品は今、文庫でも読めるが、岩波書店によれば、岩波文庫には昭和2年の創刊ラインアップ(23冊)から入り、現在まで123刷、75万部を数える。
 露伴研究で知られる出口智之・東京大学大学院准教授は「職人が一念発起して建てた五重塔がすべてに超越し、残るという芸術の勝利、人間の力の尊さをたたえる理想主義の主題がわかりやすい。緊密な構成、人物造形もすぐれ、かつ長すぎない(同文庫で116ページ)」と評する。
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田露伴

 一方、「露伴の文体は難しいといわれるが、この作品では俗語や笑い声が大量に入るおもしろさも」。源太の子分が酔って語る場面では〈茶袋とは母親(おふくろ)の事です…しかも渋をひいた番茶の方です、あッハハハ〉など、「職人の生きようが手に取るように蘇(よみがえ)り、語りの海にのまれていく心地よさがある。知識と歴史と文化の中に漂わせてくれる知的おもしろさを若い人にも身につけてほしい」と話す。

 文体に関して「リズム感があり、語りもうまい人だったのでしょう。話のテンポは、祖母や母にも流れている気がする」というのは露伴のひ孫で作家、翻訳家の青木奈緒さん。露伴から4代にわたり文筆活動を続けている立場から、『五重塔』をはじめ明治の作品を後世に継ぐ意義と思いを語る。
 「今の尺度、考え方とは違う明治の感覚を心に留めてほしい。それには明治生まれの身内などを通じ、その感覚がどこかに残っている昭和生まれの私たちがつないでいかないと。手を離したら明治はするっと抜けていってしまうから」(三保谷浩輝)
 次回は21日『最暗黒の東京』(松原岩五郎)です。
【プロフィル】幸田露伴
 こうだ・ろはん 本名・成行(しげゆき)。慶応3(1867)年、江戸で幕臣の家に生まれる。漢学塾などで多くの漢籍、仏典、江戸文学などを学び、博覧強記として知られる。明治22年、雑誌に処女作「露団々(つゆだんだん)」を発表。25年、「五重塔」「血紅星(けっこうせい)」をまとめ、『小説尾花集』を出版。明治の文壇で尾崎紅葉とともに“紅露時代”を築く。30年代からは史伝や評論、随筆でも活躍した。昭和22(1947)年、死去。娘の幸田文(あや)は随筆家、小説家。孫の青木玉(たま)さんは随筆家。東京・谷中の天王寺の五重塔は32年、心中事件による火災で焼失した。

*2018.05.14 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180514/lif1805140023-n1.html)

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