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zoom RSS 【明治の50冊】(14)三宅雪嶺「真善美日本人」「偽悪醜日本人」 世界に開かれた国粋主義…

<<   作成日時 : 2018/09/23 23:20   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 明治16(1883)年7月、いまNBF日比谷ビルが建つ皇居前に鹿鳴館が完成した。設計はお雇い外国人のジョサイア・コンドルである。建設の目的は不平等条約改正交渉の舞台とすること。外国の公使やビジネスマンを招いて贅(ぜい)を尽くしたパーティーや舞踏会が夜な夜な催された。鹿鳴館時代の幕開けだ。
 もちろん西洋の猿まねのような政策を「亡国的」と感じる国民も多かった。そして、19年10月に起きた英国船「ノルマントン号」事件をきっかけに、鹿鳴館時代はあっけなく幕を閉じる。日本人乗客25人を乗せた同船が和歌山県沖で難破、欧州の乗組員26人全員が救命ボートで脱出したが、日本人全員が船中で溺死したのである。
 事件後、文部省編輯(へんしゅう)局で『日本仏教史』の編集作業に従事していた三宅雪嶺は、官職を捨てて野に下る。21年、のちに『日本風景論』を著す志賀重昂(しげたか)らと政教社を設立、国粋主義に立つ政治評論雑誌「日本人」を創刊して言論活動を開始する。
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中村研一が昭和18年に描いた三宅雪嶺(写真はいずれも流通経済大三宅雪嶺記念資料館提供)

 《一面は鹿鳴館に高官が戯れ、醜声の外に漏れたのに刺激され、一面は政府が保安条例を執行し、枯尾花(かれおばな)に驚く狼狽(ろうばい)さ加減に動かされ、余りだらしなくて仕方なく、何とかせねばならぬ》との思いで政教社を設立したと雪嶺は述べる。
 24年、32歳のときに評論『真善美日本人』と『偽悪醜日本人』を発表。前者で雪嶺は《自国のために力を尽すは、世界のために力を尽すなり、民種の特色を発揚するは人類の化育を裨補(ひほ)するなり、護国と博愛となんぞ撞着(どうちゃく)することあらん》と書き始め、日本人が固有の価値を自覚してそれを磨いてゆけば、白人の欠陥を補って真善美の価値を実現した世界が実現できると主張する。
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『真善美日本人』

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『偽悪醜日本人』

 後者では、自国固有の価値を軽視してひたすら欧化にいそしむ風潮と、そこで生じる学術界、美術界の腐敗を激しく批判してこう記す。《おおよそ社会の事物たる、他を模倣せんよりは、自家固有の特質を発達せしむるの優たることあり。けだし我が固有の風俗たる、いずくんぞことごとく抹殺すべきものならんや。そもそも外事を取りて、これを用いんことあえて排難すべきにあらずといえども、そのこれをなさんにはあらかじめ守るところなかるべからず》
 彼の国粋主義は世界に開かれたものだった。「欧化か国粋か、それとも…」。雪嶺がこの2冊において提起した課題は、若い知識人に深く突き刺さる。夏目漱石、西田幾多郎、鈴木大拙(だいせつ)、津田左右吉(そうきち)…。彼らはこの課題に向き合い、苦悶(くもん)しながら自らの思想を形成してゆくのだ。

 「雪嶺はジャーナリストである前に哲学徒でした。政治や世相を論じて皮相的にならないのは、ものごとを根源的に考えようとしたから。だから普遍性を持ち、古びることがありません。この2冊もプラトンのイデア論の影響が感じられます」と流通経済大三宅雪嶺記念資料館の学芸員、五十嵐卓さんは解説する。
 残念ながら、この世界に開かれた国粋主義は、やがて独善的となり、ついには超国家主義となって、日本人を悲劇に導く。そして現在の日本は、グローバリズムに迎合してどんどん固有の価値を失い、平板化する一方のように見える。
 昭和60年に2冊は講談社学術文庫にまとめられて復刊されたが、初版6000部を発行しただけで重版はかからなかった。現在も重版の予定はないという。
 五十嵐さんは言う。「こんな時代だからこそ、雪嶺の国粋主義に触れる意味があると考えます」(桑原聡)
 次回は5月14日『五重塔』(幸田露伴)です。
【プロフィル】三宅雪嶺
 みやけ・せつれい 万延元(1860)年、加賀藩家老家の儒医の家に生まれる。本名・雄二郎。東京大文学部哲学科卒。明治21年に志賀重昂らと政治評論団体「政教社」を設立。国粋主義の立場から雑誌「日本人」を創刊して政府の専制と欧化主義を批判する。著書に『王陽明』『宇宙』『明治思想小史』『同時代史』など。ジャーナリスト、政治家の中野正剛(せいごう)は娘婿。昭和18年、文化勲章受章。20年、死去。

*2018.04.23 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180423/lif1804230015-n1.html)

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