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zoom RSS 【明治の50冊】(12)森鴎外「舞姫」論争呼んだ悲恋の告白

<<   作成日時 : 2018/09/09 22:19   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 文豪・森鴎外の小説デビュー作『舞姫』は明治23(1890)年、雑誌『国民之友』に発表された。19世紀のベルリンを舞台に、日本人青年とドイツ人女性との悲恋を流麗な文語体でつづった短編小説。海外渡航が夢のまた夢だった時代に書かれた異国情緒あふれるモダンな物語は、恋と出世との相克というテーマや鴎外の実体験への興味が相まって読み継がれていく。
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『舞姫』はさまざまな装いで文庫化され、読み継がれている

 ドイツへ留学した若きエリート官僚である主人公・太田豊太郎は、ベルリンで会った踊り子、エリスと恋に落ちる。やがて上司の意に背いたとして免職されるものの、旧友の引き立てで伯爵の通訳をこなし再び信頼を得る。栄達か愛情か−。人生の岐路に立たされながら恋におぼれていく豊太郎だが、妊娠したエリスとの仲を明かさぬまま、出世につながる伯爵からの帰国の求めを受けいれてしまう。そんな裏切りの顛末(てんまつ)が日本への帰途に記した手記の形で語り起こされる。
 発表の2年前、26歳の鴎外は陸軍軍医として4年間のドイツ留学を終えて帰国していた。物語にはこの留学時の体験も投影されているとされる。明治維新から20年余りが過ぎ、近代日本文学の出発を告げる坪内逍遥の『小説神髄』もすでに発表されていた。

 「近代的な個の概念が芽生え、人々に自己表現の欲望が生まれる。一方で『小説神髄』で江戸期の戯作のような勧善懲悪の撤廃が唱えられた。その合わさったところに恋の煩悶(はんもん)を告白する『舞姫』が生まれた」と話すのは文芸評論家で明治大准教授の伊藤氏貴さん。当時、西洋から入った「恋愛」という観念が浸透しつつあったことに注目する。「それまで男性にとって重要だったのは家であり出世。その出世と並べて何年も思い悩むだけの価値があるものとして『恋』が描かれた。そこに新しさがあった」
 実際、豊太郎の選択は論議を呼んだ。評論家の石橋忍月は明治23年に発表した評論で、豊太郎の性格を分析。エリスを捨てて帰国する筋書きは理屈に合わないとして〈功名を捨てゝ恋愛を取るべき〉だったと主張した。鴎外も、豊太郎とエリスの間にあるのは〈真の愛〉ではないなどと反論し、「舞姫論争」として文学史に刻まれることになる。
 痛切な悲恋ゆえか、モデル論争も収まらない。恋人エリスのモデルとされるドイツ人女性が鴎外を追って来日し、親族らの説得で帰国させられたことが後に分かった。平成23年刊の『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』(六草いちか著、講談社)では、教会の出生簿などを基に「現在のポーランドに生まれた20〜21歳女性」という新たなエリス像が示された。
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ドイツ留学時代の森鴎外(文京区立森鴎外記念館提供)

 ちくま文庫から18年に出た作家の井上靖さんによる現代語訳は16刷4万部超のロングセラーに。生誕150年となる24年には鴎外の旧居跡に文京区立森鴎外記念館がオープンした。

 「高校教科書に採録される文学作品は、芥川龍之介『羅生門』、中島敦『山月記』、夏目漱石『こころ』が定番。難読な文語体ながら『舞姫』はこの3作に次いで多い」と伊藤さん。今も大学の授業で扱うと、豊太郎の選択をめぐり議論が盛り上がるという。ただ、伊藤さんは道徳論に終始するのはもったいないとも感じている。
 「SNS全盛で情報交換は密になったけれど、そこで見せるのは他人向けの顔でしかない。今の若い世代にも、自分のすべてを打ち明け、丸ごと引き受けてほしいという欲望はあるはず。その意味で、自らを美化せず、悪い部分をもえぐるように告白する“個の叫び”のような『舞姫』は古びていない」(海老沢類)
 次回は16日『南洲翁遺訓』(西郷隆盛)です。
【プロフィル】森鴎外
 もり・おうがい 文久2(1862)年、石見国(現在の島根県)津和野に生まれる。本名・林太郎。東大医学部卒業後、陸軍軍医となる。4年間のドイツ留学を経て、軍医としての職務の傍ら『舞姫』『うたかたの記』などを執筆。多数の小説、随想を発表する。主な作品に『ヰタ・セクスアリス』『雁』『阿部一族』など。大正11(1922)年、萎縮腎と結核のため死去した。

*2018.04.02 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180402/lif1804020012-n1.html)

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