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zoom RSS 【明治の50冊】(9)二葉亭四迷「浮雲」 苦悩描き、近代小説の原動力に

<<   作成日時 : 2018/07/06 23:39   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 この連載でも何度かふれている明治10年代後半の言文一致運動は、文章を口語的な文体で書こうという文章改革だった。そのうねりのなかで生まれた初の言文一致体小説『浮雲』は第一編が20(1887)年6月、第二編が21年2月に出版、第三編は雑誌上で22年7、8月に発表された。
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『浮雲』(第二編)表紙。二葉亭は当時無名だったため、坪内逍遥(雄蔵)名義で出版された

 二葉亭は第一編執筆時23歳。文学の師で、生涯の友でもあった5歳上の坪内逍遥から「(速記本『怪談牡丹燈籠』で人気だった三遊亭)円朝の落語通りに書いてみたらどうか」などと助言され、翻訳物などで試作を重ねた末の果実だった。
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二葉亭四迷(国立国会図書館蔵)

 母を故郷に一人残したまま東京で苦学、下級官吏となったまじめ一途(いちず)な内海文三の苦悩の日々を描いた。文三を取り巻くのは役所の先輩、本田昇、文三が思いを寄せる従妹(いとこ)のお勢(せい)、叔母のお政(まさ)ら。
 昇は何事にも如才ない出世主義者、お勢は美しく、教育もあるが、流行や人に影響されやすい性格。万事に抜け目のないお政は、お勢を文三の嫁にと考えていたが、文三が役所の人員整理で免職になると一転冷たくなる。逆に免職を免れた昇がお勢に接近し、お政もお勢に「本田さんなら、どうだえ?」と…。

 3人の言動と、それに右往左往する文三の様子が、言文一致の文体と精緻な写実主義によりリアル、鮮やかに描かれ、近代小説の先駆けとされる作品だ。
 森鴎外は後に、「小説の筆が心理的方面に動き出したのは、日本ではあれが始であらう。あの時代にあんなものを書いたのには驚かざることを得ない」、正宗白鳥も「これは単なる青春詠嘆の書ではない。(中略)当時の社会相が、多少の稚気があつても、そこに活写されてゐる」と評した。
 折しも、18〜19年の官制改革や学校改革など、憲法発布を控えて国家体制が整っていく一方、維新以来のさまざまな矛盾が表面化する時期。二葉亭の「作家苦心談」(30年)、「予が半生の懺悔(ざんげ)」(41年)によれば、『浮雲』には「官尊民卑への反発」「青年男女の傾向」「新旧思想の衝突」「知識階級の苦悩」「日本文明の裏面」といったテーマが込められていた。
 早稲田大の中島国彦名誉教授(日本近代文学)は「文学史的な意味合いだけでなく、いろいろなことを教えてくれる。模索そのものも大きなテーマで、二葉亭自身が文字どおり模索し、試みた。彼がこの作品に注いだ思いが、近代小説を後に支える原動力になった」とみる。そのうえで「時代や人間の可能性、あり方、幅を考えるときに役立つ」と後世に与える意義を強調する。

 同大文学学術院非常勤講師の長島裕子さんは昨年、文学部2年生の演習で『浮雲』を扱った。
 「言文一致といっても、最初は古文のようで読みにくいのがいつの間にかすらすら。二葉亭ってこんなにおもしろい作品を書いていたのかと、若い人も引きつけられる。自分は何者か、社会とどう対峙(たいじ)するか…。文三が思い悩む姿に学生も一喜一憂。自分も思い悩んでいいんだという安堵(あんど)感もあったようです」
 『浮雲』は未完といわれるが、時代を超えて人々に力を与える普遍性を持ち、岩波文庫版、新潮文庫版でもロングセラーに。『二葉亭四迷伝』などで知られる文芸評論家、中村光夫が昭和16年、岩波文庫版に寄せた解説の一文がしみる。
 〈周囲をながめて見たまえ。文三も昇もなお形をかえて、現代に生きる僕らの身辺に(中略)心の内部に厳として実在するのである〉(三保谷浩輝)
 次回は19日『言海』(大槻文彦)です。
【用語解説】二葉亭四迷
 ふたばてい・しめい 元治元(1864)年、尾張藩士の子として江戸で生まれる。本名・長谷川辰之助。東京外国語学校露語科でロシア文学を学び、明治20年、山田美妙著『風琴調一節』とともに言文一致体初の小説『浮雲』を出版。翻訳『あひゞき』『めぐりあひ』なども次々発表。内閣官報局員、東京外国語学校教授、事業家を経て、大阪朝日新聞社東京出張員となり、小説『其面影』『平凡』を連載。特派員としてロシアに渡ったが、肺結核で帰国途上の明治42(1909)年5月10日、ベンガル湾上の船中で死去。

*2018.03.12 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180312/lif1803120021-n1.html)

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