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zoom RSS 【明治の50冊】(5)三遊亭円朝「怪談牡丹燈籠」 「言文一致」文芸運動の象徴

<<   作成日時 : 2018/05/27 00:01   >>

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 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 『怪談牡丹燈籠(ぼたんどうろう)』は、近代落語の祖といわれる三遊亭円朝の代表作だ。焦がれ死にした美しい娘の幽霊が、駒下駄の音を響かせ、夜ごと恋人の元へと通う…。旗本の娘お露(つゆ)と浪人・萩原新三郎の悲恋の凄惨(せいさん)な結末は、歌舞伎化もされ、落語を離れた怪談として知る人も多いだろう。
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三遊亭円朝

 この噺(はなし)を円朝は23〜24歳のころに創作した。刊行は明治17(1884)年。日本初の実用速記者と呼ばれる若林●(王へんに甘)蔵(かんぞう)らが、高座で演じられたままを筆記した速記本だった。
 劇作家の岡本綺堂は、円朝の「牡丹燈籠」の思い出を記している。13、14歳のとき、評判を知って速記本を近所の人から借りて読んだが、さほど怖いと思えない。高をくくって寄席に行くと、自分一人が古家で怪談を聴かされているような気になり、円朝の話術におびやかされて夜道を逃げるように帰ったという。
 落語家の柳家小満んさん(75)は、「足がないはずの幽霊に、カラン、コローンと音を出させるのはすごい工夫」と話す。お露新三郎の怪談は、全13編中の第3編に登場するエピソードだ。魔よけの札をはがして幽霊を手引きし、新三郎を死に追いやった伴蔵お峯夫妻の行く末、お露の父の旗本屋敷での不義密通事件と忠僕・孝助の敵討ち物語が、複雑に絡んで語り継がれていく。
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「怪談牡丹燈籠」の別製本の口絵。坪内逍遥が序文を寄せている

 当時の寄席は15日間通し興行。寄席の数も多く、夕飯の後に気軽に出かけるような場所だった。「1日おきで2つの物語が縄をなうように語られ、最後に一つにつながる。どうすれば客の興味を引くかを心得たやり方です」(小満んさん)
 もともと円朝は、背景に道具を使った芝居噺を得意とした。しかし、先に高座に上がった師匠にその噺を先にやられるという嫌がらせなどを受け、創作落語の道を切り開いていく。
 円朝の速記本は、文学の言文一致運動に影響を与えたことでも知られる。二葉亭四迷は坪内逍遥に「円朝の落語通りに書いてみたらどうか」とアドバイスされ、山田美妙も自作を「円朝子の人情噺の筆記に修飾を加えた様なもの」と述べている。
 『円朝全集』(岩波書店)編集委員の清水康行・日本女子大教授(国語学)は「速記が実用化されていく時期と、言文一致的な発想で作家たちが書いていく時期が重なり、そこに売れっ子の円朝がたまたま関わった」と解説する。
 清水教授によると、言文一致では、どんな敬語法を使うのか、文末をどこで区切るのかが問題となった。『怪談牡丹燈籠』の文体は直接の解決には結びつかないが、談話調として完成度が高く新鮮で、人々に大いに受け入れられ、新しい文芸運動のシンボリックな位置を占めたようだ。

 円朝の速記本は続々と刊行され、他の落語家や講談師による速記本や速記雑誌、新聞連載などを生み出した。速記雑誌は大衆文芸雑誌へと発展していく。
 終盤、新三郎殺害は幽霊ではなく、伴蔵の仕業だったという、身も蓋もない種明かしが起こる。「近代のある種の合理性の中で、怪談話が成立するために必要なつじつま合わせだったと思う」と清水教授。
 持ち時間が限られる現代の寄席では、お露新三郎の怪談、悪に目覚めていく伴蔵と女房の心理劇などがクローズアップされ、主筋ともいえる孝助の勧善懲悪話が演じられることはめったにない。だが、全体像を見直して語っていこうとする立川志の輔のような落語家も出てきている。速記術によって、長大なオリジナルがそのまま残されているからこそだ。時代の光によって、さまざまに切り取られる。名作たるゆえんだろう。(永井優子)
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東京・谷中の全生庵にある三遊亭円朝の墓。全生庵では毎年8月11日の円朝忌に合わせて、円朝が収集していた幽霊画が一般公開されている=東京都台東区
【プロフィル】さんゆうてい・えんちょう
 天保10(1839)年、江戸・湯島で落語家の息子として生まれる。本名・出淵(いずぶち)次郎吉。7歳で高座に上がり、9歳で父の師である二代目三遊亭円生に入門。安政2(1855)年に円朝を名乗り真打となる。芝居噺を大道具・鳴り物入りで演じて人気を博したが、のちに扇子一本の素噺に転向。代表作は「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」「怪談牡丹燈籠」「塩原多助一代記」など。明治33(1900)年、死去。
 次回は19日『小説神髄』(坪内逍遥)です。



*2018.02.12 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180212/lif1802120021-n1.html)

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