モノトーンの肖像画

アクセスカウンタ

zoom RSS 【明治の50冊】(3)一身独立説く「近代の源流」 福澤諭吉『文明論之概略』

<<   作成日時 : 2018/05/13 22:47   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 明治150年にあたる今年、産経新聞社では明治年間に書かれた先達の作品を紹介していきます。著作権も切れ、ともすれば忘れがちになる古典をもう一度再認識させてくれる好企画です。

 明治7(1874)年3月から1年を費やして書かれ、8年8月に刊行された福澤諭吉の『文明論之概略』。5年2月から9年11月にかけて大衆向けに出された全17編のシリーズ『学問のすゝめ』と同時期に、福澤は本書を執筆した。明治新政府による厳しい言論統制が実施されるなかで、福澤は『学問−』で観測気球をあげて国民や新政府の反応をうかがいつつ、慎重に筆を進めていったらしい。したたかな戦略家なのだ。
画像
福澤諭吉『文明論之概略』

 31年版「福澤全集」(全5巻、時事新報社)第1巻の巻頭に掲げた「緒言」にこう書いている。
 《読者は何(いず)れ五十歳以上視力も漸(ようや)く衰へ且(か)つ其(その)少年時代より粗大なる版本に慣れたる眼なればとて文明論の版本は特に文字を大にして古本(こほん)の太平記同様の体裁に印刷せしめたり》
 つまり、大衆を対象とした『学問−』に対して、本書は封建制度のもとで教養を積んだ知識人に向けて書かれたのだ。彼らに近代の人間と国家のあり方を説いて理解してもらおうと、自身の知見を惜しみなく注ぎ込む。この層が文明の精神を身につけない限り、日本の近代化は形だけのものとなり、独立を守り通すことはかなわないと考えたからだ。加えて、国民が手に入れつつある「自由」を後退させるかのような施策を打ち出す明治新政府に対抗するには、この層が力を持つ以外に道はないからだ。首尾はどうだったか。「緒言」にこうある。

 《本書の発行も頗(すこぶ)る広くして何万部の大数に達したりしが果して著者の思ふ通りに故老(ころう)学者の熟読通覧を得たるや否や知る可(べか)らざれども発行後意外の老先生より手書(しゅしょ)到来して好評を得たること多し。有名なる故西郷翁なども通読したることと見え少年子弟に此(この)著書を読むが宜(よろ)しと語りしことありと云(い)ふ》
 征韓論に端を発する明治6年の政変で下野した西郷隆盛も本書を読んで感銘を受け、彼を慕う青年たちに薦めていたというのだ。
画像
慶応義塾発祥の地を示す石碑。安政5(1858)年、福澤諭吉が江戸築地鉄砲洲にあった中津藩中屋敷内の蘭学塾の教師に就任したことで慶応義塾の歴史が始まった=東京都中央区明石町

 さて、本書全10章にわたり論じられるのは、つまるところ『学問−』で訴えた「一身独立して一国独立す」である。古今東西の学問や歴史、世界事情に精通していることにも驚かされるが、その知見を国の独立を守るという目的に向けて総合する能力こそ、真に驚嘆すべきところだろう。
 昨年、角川ソフィア文庫から現代語訳を出した先崎彰容・日大教授は「日本の近代の源流であり、明治以降のわが国の進むべき方向性を示したマニフェスト」と評する。齋藤孝・明大教授の現代語訳を担当した筑摩書房の伊藤大五郎さんは「先見性、レトリックの妙味、リズミカルな文章、普遍的な論点。古びることのない名著」と話す。
 ちなみに『文明論之概略』が岩波文庫に入ったのが昭和6年のこと。これまでの発行部数は28万部。福澤と本書にほれ込み、昭和末期に原著の倍以上の紙数を使って解説したのが、日本政治思想が専門の丸山真男氏だった。近代的市民という視点で本書を読み解いた『「文明論之概略」を読む』(岩波新書上中下)は3巻合わせて43万部に達している。丸山氏の読みに異議を唱える研究書も数多く刊行されている。これも本書が「近代の源流」であり、基軸となり得るゆえの現象だろう。
 先崎氏は言う。
 「今年は明治150年。わが国はどこから来て、どこを目指そうとしているのか、総点検が求められています。その際、必要なのは『源流』にまでさかのぼって思考することでしょう。『文明論之概略』にはヒントがちりばめられているはずです」(桑原聡)
 次週は『小学唱歌集』(文部省音楽取調掛編)です。
【プロフィル】福澤諭吉
 ふくざわ・ゆきち 天保5年12月(1835年1月)、豊前(大分県)中津藩士の家に生まれる。大坂の適塾で学び、安政5(58)年、江戸で蘭学塾を開く(後の慶応義塾)。英語を独習し、万延元(60)年、咸臨丸で渡米。元治元(64)年に幕臣となり、外国奉行翻訳方を務める。維新後は新政府への出仕を拒み、在野で教育や言論活動に注力。『学問のすゝめ』『文明論之概略』など多数の啓蒙書を著した。明治34(1901)年、死去。

*2018.01.22 産経新聞より
(https://www.sankei.com/life/news/180122/lif1801220023-n1.html)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

天気予報


コアラのマーチ


AKB48ブログ集

© AKB48ブログ集
【明治の50冊】(3)一身独立説く「近代の源流」 福澤諭吉『文明論之概略』 モノトーンの肖像画/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる