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zoom RSS 【マキャベリ流−是非に及ばず】(31)

<<   作成日時 : 2017/12/09 22:17   >>

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 日本史に関する記事では定評のある産経新聞、今回は数々の著作もある論説委員の関厚夫さんが、マキャベリをとおして日本史を語ります。必見です。

NOBUNAGA(31)たいそうひいきにしている人物にこそ、陰謀を警戒せよ

 元号が3日前に「永禄(13年)」から変わったばかりの元亀元(1570)年4月26日(旧暦)。織田信長は、攻略したばかりの山城・金ヶ崎城(福井県敦賀市)から北を睥睨(へいげい)していたにちがいない。
 北北東約40キロ先には、総勢3万という織田軍の矛先が向けられている朝倉義景の拠点・一乗谷(いちじょうがたに)城(福井市)。そして敦賀湾を越えて約30キロ真北には、一族発祥の地・織田荘(おたのしょう)(庄)が広がっていた。
 この戦いは、遠縁であり、かつては同じ主(あるじ)のもとで遠祖が同僚としてしのぎを削った因縁の宿敵・朝倉氏を相手にした、天下取りへの足掛かりであり、父祖の地への凱旋(がいせん)をも意味していた。
 まもなく、信長のもとに飛報がもたらされる。妹・お市の婿の戦国大名、浅井長政が「裏切った」という。
 《陰謀からわが身を守ろうとする君主は、さんざん虐待した相手ではなく、むしろたいへんひいきにしていた人物にこそ、十分警戒をはらわねばならない。というのは、ひどい目にあわされている連中には、それを果たす機会がないのに対し、寵愛(ちょうあい)を受けている人物にはそんな機会はどこにでもころがっているからである》(※1)

 そんなお師匠(マキャベリ)様(さん)の『政略論』通りの展開だが、『信長公記』によると、信長は「れっきとした身内であるうえ、北近江一円を与えてあるのだから、不満があるわけがない。うそに決まっている」と信じようとしない。
 そこに続々と「やはり裏切り」との報が入る。お市が「袋のネズミ」を示唆する「両端縛りの小豆袋」を陣中に贈ったという逸話が事実ならばこのときのことだろう。
 翻心した信長は口を開く。
 「是非に及ばず」
 12年後の「本能寺の変」で、信長が明智光秀の謀反を悟ったときとまったく同じ。この言葉を放つとき、彼の胸中にあるのは「やむをえない」「仕方ない」という諦念が入り交じった野狐禅(やこぜん)もどきの心境ではなく、激しい怒りや無念であることはこの連載の最初の方で述べた。
 「言語道断!」
 意訳をお許しいただければ「大馬鹿(ばか)者!」という腹の底からの叫びであろう。
 それがだれに向けられているかは別として、信長の憤怒は最高潮に達し、鬼の形相をみせていたはずである。
 福井県越前町に「織田」の名を冠した盆地がある。
 信長の祖先はこの地方の有力者だったということについて、研究者の見解は一致している。だが、その「職業」については「荘官(荘園の管理者)もしくは同荘内にある劔(つるぎ)神社の神職出身とする説がある」(池上裕子氏著『人物叢書(そうしょ) 織田信長』)とも、「荘官と劔神社の神主を兼ねる家系」(『ブリタニカ国際大百科事典』)ともされる。
 さてその劔神社は素戔嗚尊(すさのおのみこと)を主祭神とし、一の宮・気比(けひ)神宮に続く越前国の二の宮。古来、朝廷や武家から厚い信仰を集めており、諸説どうあれ信長はこうした歴史(ファミリーヒストリー)を強く意識していた。
 「織田大明神(劔神社)の神領については、先祖に特別の子細があるゆえ、一切手をつけてはならぬ」
 越前を再平定した直後の天正3(1575)年9月、信長は「越前目付」の前田利家らにそう命じている。またその2カ月後には、越前半国を任された柴田勝家は「劔神社は殿様(信長のこと)の御氏神」とのふれを出した。

 信長の祖先は、足利氏の支族で室町幕府管領という名家の越前守護、斯波(しば)氏に仕えていた。斯波義教(よしのり)(1371〜1418年)が尾張と遠江の守護も兼ねるようになったとき織田常昌(松)が尾張守護代に抜擢(ばってき)され、一族が移住した。一方、斯波氏代々の重臣だった朝倉氏は15世紀後半、「下克上」の先駆けとして主家を追い、越前を掌握する。
 信長の織田家は常昌を祖とはするが庶流で、守護代織田家の「三奉行」の一つ、斯波氏の陪臣(ばいしん)だった。信長の「祖先崇拝」はそのコンプレックスゆえではないかな−などと考えていたら、突然、お師匠様が右手の人さし指を左右に振りながら現れた。
 「違うな。的外れだな。それにしても信長は自己を神格化していた−と熱弁していたのはお前じゃなかったのか? そんな野郎が祖先や祖神の崇拝に終始すると思うかね。『金持ち貴族連中がおれたちに見せつける血統の古さに恐れ入ってしまうことはない。なぜなら人は誰でも、同じ一人の先祖をもっているのだから、同じく古い血統をもっているし、自然によって同じように造られているからだ。素っ裸になれば、皆同じ』(※2)。おれさまのこの名文句が信長の野郎に通ずるところがあるんじゃねえか」
 つらい。最近とみに膝裏とふくらはぎ痛に悩まされるようになった身にはこのアップダウンの繰り返しはつらい。
 敦賀湾を見下ろす「月見御殿跡」だけでやめておけばよかった。「ついでに金ヶ崎城よりも1日早く落ちた支城・天筒山(てづつやま)城跡をみてやれ」と思ったのが間違いだった。
画像
天筒山城跡展望台から敦賀湾をのぞむ=福井県敦賀市(関厚夫撮影)

 城跡にある展望台までの1キロが長い。「クマ出没 注意」の看板が目に入る。「もうだめだ」と思った途端、お師匠様の怒声がとどろいた。
 「大馬鹿者! 今回から『裏切られ信長』シリーズが始まるから『筆者も読者の期待を裏切って終わります』ってわけか。真面目にしろ! というか、いったいだれがそんなオチに気がつくんだ!」(編集委員 関厚夫)
 ※1 中央公論社『世界の名著21 マキアヴェリ』
 ※2 岩波文庫『フィレンツェ史(上)』 一部編集


*2017.07.09 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/170709/lif1707090009-n3.html)

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