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zoom RSS 【敗者烈伝】〜北条氏政(上) 慎重で狡猾な4代目 作家・伊東潤

<<   作成日時 : 2016/02/27 22:05   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 北条氏政といえば、軍記物に見られる「汁かけ飯」の逸話が有名である。
 小田原北条氏3代当主の氏康と、その嫡男の氏政が、小田原城内で一緒に食事を取っていた時のことである。氏政は飯に汁をかけて食べようとするのだが、かける分量をうまく見積もれず、食べてはかけてを繰り返していた。それを見た氏康が、「飯にかける汁の量も測れんとは、わしの代で当家も終わりか」と嘆いたという話である。長期的展望に欠ける氏政を揶揄(やゆ)した話だが、よく考えれば、氏政の慎重さを物語っている逸話でもある。
画像
北条氏政像(小田原市提供)

 確かに氏政は「思い切りのよさ」に欠けていた。その半面、慎重で狡猾(こうかつ)な一面も持ち合わせており、それが功を奏した場面も多々あった。
 天文7(1538)年生まれの氏政は、永禄2(1559)年に氏康から家督を継ぐが、実権はなきに等しく、元亀2(1571)年の父氏康の死によって、ようやく北条氏の全権を掌握した。
 最初の仕事は、越後の上杉謙信との間に結ばれた越相(えつそう)同盟を解消し、甲斐の武田信玄と再同盟を結ぶことだった。そもそも北条・武田両氏が手切れしたのは、永禄11年12月、信玄が一方的に甲相駿(こうそうすん)三国同盟を破棄し、駿河に攻め入って今川氏を滅ぼしたことにある。これに怒った氏康が、武田氏との同盟を破棄して上杉氏と越相同盟を締結したのであり、北条・武田両氏間での再同盟は、戦略・血縁・地勢の面で自然な流れだった。

 氏康の死を機として、氏政が迅速な外交政策の転換を図ったのは、評価に値する。その結果として、関東を舞台に北条・上杉両氏の衝突が繰り広げられるようになるが、氏政はこの戦いに勝ち抜き、天正2(1574)年11月、武蔵・下総両国の完全領有を成し遂げた。
 華々しい大合戦で勝利したわけではないが、氏政は硬軟取り混ぜた駆け引きと、小戦(こいくさ)を繰り返した末、謙信との戦いを勝ち抜いた。この結果、孤立した安房の里見義弘は、天正5年、降伏同然の和睦を申し入れてきた。それでも佐竹・宇都宮・結城氏らを中心にした北関東の「東方衆一統勢力」は根強い抵抗を示し、謙信に関東越山を要請し続けた。これに応えた謙信は、天正6年4月に大規模な関東越山を行うと宣言する。
 ところがその直前、春日山城内で倒れた謙信は、そのまま死去する。これにより「東方衆一統勢力」は、自力で北条方と戦わねばならなくなった。
 しかし天正7年3月、謙信の後継者争いである御館(おたて)の乱において、謙信の養子に入っていた氏政の弟・三郎景虎が敗死することで、事態は再び一変する。しかもこの乱の最中に、信玄の後継者である勝頼が景勝に与(くみ)したため、上杉・武田両氏を敵に回した北条氏は、一転して窮地に立たされる。

 勝頼は、「東方衆一統勢力」と結んで関東を席巻(せっけん)、天正3年の長篠合戦で受けた痛手から回復したかのような攻勢を取り、氏政は「当方終(つい)には可滅亡候哉(めつぼうすべくそうろうかな)」とまで嘆くことになる。そこで氏政は徳川家康に接近し、織田信長にまで誼(よしみ)を通じようとする。
 攻める武田方、守る北条方という流れが変わったのは、天正9年3月の家康による遠江高天神城攻略である。天正10年3月、織田・徳川・北条連合は武田領国へ同時侵攻を開始する。勝頼は後退に後退を重ね、甲斐東端の天目山麓田野において自刃、ここに武田氏は滅亡する。
ところが戦後、北条氏は自力で回復した上野一国を信長から取り上げられる。信長は、武田領侵攻作戦における北条勢の貢献度が、なきに等しいと断じたのである。この時の中央政権に対する不信感が、後に氏政が、豊臣政権を容易に認められない遠因となる。(次週に続く)
【プロフィル】北条氏政
 ほうじょう・うじまさ 天文7(1538)年、相模国(現神奈川県)の戦国大名・北条氏康の長男として生まれる。永禄2年に家督を継ぎ、武田氏・上杉氏と交戦・連携を繰り返しながら北関東に版図を広げる。天正18(1590)年、豊臣秀吉に居城の小田原城を包囲され降伏。同年、弟の氏照とともに自刃した。
【プロフィル】伊東潤
 いとう・じゅん 昭和35年、横浜市生まれ。早稲田大卒業後、外資系IT企業勤務、コンサルタントなどを経て、平成19年に「武田家滅亡」で文壇デビュー。25年、「巨鯨の海」で山田風太郎賞受賞。
 ※本連載の完全版は月刊「J−novel」(実業之日本社)で連載中です。

2016.02.27 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/150709/lif1507090010-n1.html)

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コメント(2件)

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「真田丸」で高嶋政伸が氏政でいい味出してるんだな。今日楽しみ。おそらく草刈正雄とやりあうと思う。
井出浩司
2016/02/28 19:53
BSで既に観ちゃいました。昌幸の恐ろしさがわかる回ですよ。(下)も今アップしました。
管理人
2016/02/28 20:00

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