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zoom RSS 【敗者烈伝】〜桐野利秋(上) 「人斬り半次郎」像に隠れた大器 作家・伊東潤

<<   作成日時 : 2016/01/09 22:17   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 実像とはほど遠い、誤ったイメージを持たれた敗者は多い。桐野利秋などは、その典型だろう。今日に至るまで、桐野が誤解されている第一の原因は、「人斬り半次郎」という異名を世間から賜(たまわ)ったことにほかならない(桐野の初名は中村半次郎)。これにより、志士や軍人というよりも殺し屋という印象が強くなり、さらに出自が低く、さして学問も修めていなかったことから、野蛮な男と目された。その極め付きとして、「西郷隆盛を西南戦争に駆り立て、死に追い込んだ男」という評価が定着したわけである。
画像
歌川国貞の浮世絵「鹿児島英名競」に描かれた桐野利秋 =明治10年(東京都立図書館蔵)

 天保9(1838)年、鹿児島市北方の家禄5石の家に生まれた桐野は、農作業に従事するかたわら、剣術修行に励む少年時代を過ごした。その後、11歳年上の西郷隆盛に師事し、熱狂的な信者の一人となる。
 幕末期の桐野は西郷の耳目(じもく)となり、身の危険を顧みない豪胆な諜報活動で名を馳(は)せた。禁門の変から戊辰戦争にかけては主に軍事面で活躍し、鳥羽・伏見の戦いでは薩軍一番隊を指揮し、40人中28人の部下を失うという奮戦を見せる。会津城降伏の儀では、軍監として、城受け取り役の大任を果たした。この時、松平容保(かたもり)父子の落魄(らくはく)した姿を見て涙したことで、桐野の名はさらに騰(あ)がる。

 西南戦争で敵味方に分かれて戦った朋友の高島鞆之助(とものすけ)は、「竹を割ったような正直で剥き出しな性質」「男らしく潔白で豪放」「さっぱりした快濶(かいかつ)な男」と褒めちぎり、佐土原(さどわら)藩の富田通信(みちのぶ)は、「功に奢(おご)らず謙遜なる人」「至って勇猛にして敵ならば鬼を挫(くじ)く勢いでありながら、また至って愛情深き人」と称賛した。
 桐野の遠縁にあたる肝付兼行(きもつきかねゆき)によると、「実に磊落(らいらく)な淡泊な性質の人で、何人に対しても障壁を設けることをしなかった。上下貴賤(きせん)の差別なしに誰が来ても同じ部屋に通し、遠慮なしに話をするのが常だった」という。
 土佐藩の山本頼蔵(らいぞう)は、「随分正義の赴き(趣き)也」とし、同じく土方(ひじかた)久元は、「真に正論家、討幕の儀を唱える事最烈なり」と日記に記している。
 肝心の西郷は、「彼をして学問の造詣あらしめば、到底吾々(われわれ)の及ぶ所にあらず」と言っている。つまり、若い時に学問をする機会があれば、桐野は自分など及びもつかない逸物(いつぶつ)になっていたというのだ。
 明治5(1872)年に熊本鎮台司令長官、さらに陸軍裁判所長と、軍人としての出世街道をひた走っていた桐野だったが、明治6年、西郷の下野(げや)に追随し、官を辞して帰郷することになる。

 鹿児島に戻った桐野は、同じ陸軍少将だった篠原国幹(くにもと)らが私学校を設立したのと軌を一にして、吉野開墾社を開校する。これは、元近衛兵や元邏卒(らそつ)とともに原野を開墾して農作物を作るかたわら、学業を修めることを目的とする結社である。
 西郷の下野に応じて官吏を辞めた者は六百余に及んだが、彼らは西郷を慕い、一時の熱気から辞職した者がほとんどで、今後の生活の方途などない。当座の興奮から覚めると、いかにして食べていくかで彼らは途方に暮れていた。そこで桐野は、下野した者たちのために授産の道を開こうとした。
 桐野は、「今日志士として自ら任ずる者の欠点とするところは、志気余りあって、恒産乏しきにあり。恒産無ければ、どうしてよく国家の大事に任ずることができるか」(『西南記伝』)と唱え、率先して開墾や畑仕事に精を出した。
 しかし、物心両面で士族を痛めつける政府への不満は高まり、佐賀、熊本、福岡、山口などで不平士族の決起が相次いでいた。こうした動きは鹿児島士族をも刺激する。(次週に続く)
【プロフィル】桐野利秋
 きりの・としあき 天保9(1838)年、薩摩藩士の家に生まれる。示現流の達人として知られ、西郷隆盛の下で尊皇攘夷(じょうい)活動を行う。戊辰戦争で功を挙げ、維新後は陸軍少将に。熊本鎮台司令長官、陸軍裁判所長などを歴任するが、明治6(1873)年に西郷に従い下野。10年の西南戦争では薩軍の事実上の総指揮官となり、同年敗死した。

*2015.06.11 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/150611/lif1506110016-n1.html)

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内 容 ニックネーム/日時
維新政府の要人というより、人切り半次郎が僕のイメージ。
井出浩司
2016/01/09 22:25

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