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zoom RSS 【敗者烈伝】〜江藤新平(下) 負けても貫かれた“正義

<<   作成日時 : 2015/07/05 14:29   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 ちょうどそんな時、木戸孝允が欧州巡遊から帰国する。時あたかも、征韓論をめぐって参議たちは二分されていた。
 木戸は長州藩閥を救うべく、伊藤博文を介して水面下で仇敵(きゅうてき)の大久保利通と手を握る。
 これにより政治的駆け引きに敗れた西郷隆盛と江藤新平は、参議を辞して下野することになる。
 しかし江藤は屈しない。
明治7年1月、江藤は板垣退助らと共に「民撰議院設立建白書」に署名、自由民権運動に邁進(まいしん)しようとした。
 武力に代えて言論により「有司専制」を打破しようという自由民権運動は、司法制度の整備を行い、民権を拡張した上で議会政治を導入し、法治国家を築こうとする江藤の理想に合致していた。

 ところがそんな時、佐賀士族の不穏な動きが、東京の江藤の許(もと)に伝わってくる。
 ここ数年、版籍奉還、廃藩置県、国民皆兵を目指した徴兵制、散髪脱刀令など、士族の神経を逆なでするような政策が相次ぎ、その不満は積もりに積もっていた。
画像
佐賀市・神野公園に建つ江藤新平の銅像

 佐賀士族を慰撫(いぶ)すべく、江藤は佐賀に帰る。
 大久保の待っていた時が到来した。
 大久保は、「有司専制」体制確立の邪魔になる江藤を抹殺したかったのである。
 当時の佐賀には、政府の欧化政策に反対する憂国党と、江藤を支持する征韓党があった。
 江藤と同時に帰郷したのが島義勇(しま・よしたけ)である。
 「北海道開拓の父」と呼ばれた島は、三条実美(さねとみ)から佐賀鎮撫を依頼され、佐賀県権令(ごんれい)となった土佐藩出身の岩村高俊と共に佐賀に向かったのだが、船中で岩村の傲慢無礼な態度に接し、憂国党に与(くみ)することに決した。
 帰国した江藤も征韓党を抑えきれず、結局、その首魁(しゅかい)に祭り上げられる。

 岩村は、640名の熊本鎮台兵を率いて佐賀城に入った。
 明治7年2月、憂国・征韓両党に所属する4500の士族が挙兵、佐賀城から岩村らを追い落とした。
 ところが大久保は、司法と軍事の全権を自らに委ねる決定を閣議で勝ち取り、各地の鎮台兵5300を率いて博多に着陣する。
 大久保は海陸の輸送力を総動員し、瞬く間に佐賀全土に侵攻を開始、三方面から佐賀城を包囲攻撃した。
 江藤は西郷を頼るべく、落城寸前の佐賀城から脱出する。
 しかし鹿児島に行き、西郷に救援を要請したものの、西郷から色よい返事はもらえない。しかも江藤が西郷と会った日と同じ3月1日、佐賀城は落ち、脱出した島義勇は、鹿児島に逃れたところを捕まった。
 それでも江藤はあきらめず、四国に渡るが、結局、逮捕されることになる。

 江藤は島と共に裁判に付され、除族の上、斬罪梟首(きょうしゅ)という最も重い罪を言い渡された。本人の陳述もなし、上告も認めないという暗黒裁判だった。
 近代的司法制度の確立に邁進した江藤としては、無念の極みだったに違いない。
 この時の法廷には、大久保もいたが、結審した際、発言の機会が与えられないと知った江藤は、大久保を口汚く罵倒した。
 大久保は4月13日の日記に、「江藤、島以下十二人断刑につき罰文申し聞かせを聞く。江藤醜躰(醜態)笑止なり」と記した。
 さらに大久保は、斬罪となった江藤の晒(さら)し首の写真を撮らせ、江藤の妾(めかけ)が芸者をしていた新橋の色町にばらまかせた。
 大久保としては生涯の痛快事だったのだろうが、これを見て義憤に駆られた石川県士族によって、後に大久保は暗殺されることになる。
 それこそは、死せる江藤の強烈なしっぺ返しだったに違いない。
 かくして正義漢・江藤新平は敗者となった。しかし彼の精神は受け継がれ、司法省の権限は強化され、以後、貪官汚吏(たんかんおり)のはびこる余地はなくなった。
 江藤のおかげで、日本は真の近代国家となった。
 やはり正義は勝ったのである。
 次回「太田道灌(どうかん)」は9月18日に掲載します。
【プロフィル】伊東潤
 いとう・じゅん 昭和35年、横浜市生まれ。早稲田大卒業後、外資系IT企業勤務、コンサルタントなどを経て、平成19年に「武田家滅亡」で文壇デビュー。25年、「巨鯨の海」で山田風太郎賞受賞。
 ※本連載の完全版は月刊「J−novel」(実業之日本社)で連載中です。

*2014.08.28 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/140828/lif1408280013-n1.html)

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
負けても、ちゃんと裁判みたいのやってくれると思ってたんではないかな。そこで言わしてもらおう、と思っていたら、いきなり首切られたのではないかな。
井出浩司
2015/07/05 18:56

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