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zoom RSS 【敗者烈伝】〜武田勝頼(下) 「長篠の戦い」なぜ無理を承知で馬防柵を攻撃したのか

<<   作成日時 : 2015/06/28 13:45   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 常識的に考えれば、武田方は織田・徳川連合軍の攻撃に備えつつ、長篠城を力ずくで落とすべきである。
 しかし武田勝頼は長篠城を落とさず、天正3(1575)年5月21日、主力勢を率いて設楽ケ原(したらがはら)に向かい、連吾川(れんごがわ)を挟んで連合軍と対峙(たいじ)した。
 この時点で、長篠城は武田方の足枷(あしかせ)となった。勝頼は長篠城の抑えに兵力を割かねばならず、背後を脅かされた格好で決戦に臨むことになる。
 いかなる理由から勝頼が、こうした挙(きょ)に出たかは謎である。むろん長篠城囮(おとり)説は仮説であり、通説通りに落とせなかったのかもしれない。しかしそれならそれで、秩序だった「退(の)き陣」に移れば、惨敗せずに済んだはずである。
 それでは、なぜ勝頼は不利な態勢で決戦を挑んだのか。
 そこには、餌を投げれば食らい付いてくるという勝頼の性格を知り抜いた、信長の深い人間洞察力があったとしか思えない。むろん餌とは自分自身である。
 かくして勝頼は倍する敵に打ち掛かり、惨敗を喫する。
 勝頼が、無理を承知で馬防柵(ばぼうさく)を攻撃した理由を考えてみよう。
 まず勝頼が、連合軍側の兵力と火力を見くびっていた節がある。

確かに信長は、この時点で400万石の領土を有し、動員兵力も10万に上る。しかし信長は将軍義昭らに牽制(けんせい)されており、3万の兵に3千もの鉄砲を持たせ、長篠まで来援してくるなど、勝頼は思いもしなかったに違いない。
 また、勝頼が信長の来援を知ったのは、設楽ケ原に着陣した後であった可能性もある。高天神(たかてんじん)城を見捨てた信長が、長篠城を救うとは考えられず、「来ないだろう」と、高をくくっていたのかもしれない。
 かくして、相手の状況に対する洞察力の欠如や情報の不足から、勝頼は3千の軍勢を長篠城の抑えに割き、1万5千の軍勢だけで設楽ケ原に向かった。
 さらに悪いことに、長篠城の付城(つけじろ)である鳶ケ巣(とびがす)山砦(やまとりで)を、酒井忠次率いる奇襲部隊によって落とされたことで、背後の別所街道をふさがれ、武田軍の選択肢は前進突破しかなくなった。
 結局、信玄が手塩にかけて育て上げた戦国最強軍団は、設楽ケ原の露と消えることになる。
 長篠の惨敗から滅亡までの間にも、勝頼は同じような失敗を繰り返す。
 同盟者や配下の気持ちを考えず、思いつきで行動し、それが取り返しのつかない結果を招くのである。

 すなわち、急死した上杉謙信の跡目争いである御館(おたて)の乱において、謙信の養子となっていた三郎景虎(かげとら)と、その兄の北条氏政を裏切り、北条家との同盟を破綻(はたん)させたり、滅亡1年前、高天神城からの再三の後詰(うしろづめ)要請を無視して籠城衆を見殺しにし、駿遠(すんえん)国衆の信用を失ったり、最後の戦いでも、諏訪まで来ていながら高遠(たかとお)城に後詰せず、家臣団からも愛想を尽かされたりである。
 味方の気持ちに対しても洞察力を欠いた勝頼は、長篠の失敗から学べず滅亡した。
 それは、ひとえに勝頼の気質にあったと思われる。つまり、何事に対しても感情的で意固地になり、大局的見地から状況判断できないのだ。
 それでいて場当たり的に方針を変更し、何か閃(ひらめ)くと、すぐに行動に移したがる。また、問題を損切りできずに先送りするという悪癖もある。
 このように勝頼は、勇猛果敢な侍大将だったが優秀な戦国大名ではなかった。
 こうした勝頼の欠点の数々は、誰かと似ていないだろうか。
 例えば、あなたの会社の社長とか−。

 この4月、長篠合戦をテーマにした『天地雷動』(KADOKAWA)という長編小説を出版した。合戦までの経緯や両軍の心の動きなどを精緻(せいち)に追っているので、ご関心があれば、ぜひ手に取っていただきたい。(作家・伊東潤)
 次回「江藤新平」は8月21日に掲載します。
【プロフィル】伊東潤
 いとう・じゅん 昭和35年、横浜市生まれ。早稲田大卒業後、外資系IT企業勤務、コンサルタントなどを経て、平成19年に「武田家滅亡」で文壇デビュー。25年、「巨鯨の海」で山田風太郎賞受賞。
 ※本連載の完全版は月刊「J−novel」(実業之日本社)で連載中です。

*2014.07.31 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/140731/lif1407310040-n1.html)



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僕の考えとはちょっと違うみたい。
井出浩司
2015/06/28 21:34

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