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zoom RSS 【敗者烈伝】〜高師直(上) 歴史物語で必要な「悪役」

<<   作成日時 : 2015/06/20 01:11   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 世の中には、悪人ないしは悪役が必要である。
 もし悪人がいなければ、善人は引き立たないし、声高に正義を叫ぶこともできない。また悪役がいなければ、世の多くの物語は成り立たず、読者や視聴者は主役に感情移入もできない。
 大衆は「善悪どちらか」という線引きが大好きで、曖昧なものを嫌う。しかし善悪とは、そうした一元的な線引きでは片付けられず、実に分かりにくいものである。
 そこで『太平記』などの軍記物は、「朝廷に弓引く者」(朝敵)かどうかという観点で、善悪の線引きをする。しかも朝敵のほとんどが、無残な最期を遂げることになっているので、実に都合がいい。
 ところが、こうした「勧善懲悪定理」を覆すようにして成立してしまった政権がある。しかもその政権は、別の皇統を利用して天皇を擁立、次第に衰微しつつも、237年の長きにわたって続いてしまうのである。
 足利政権、いわゆる室町幕府である。
 しかしこのままでは、日本人の大好きな「勧善懲悪定理」が成り立たない。
 室町幕府の初代将軍である足利尊氏(たかうじ)は、歴史的評価も巷間(こうかん)の人気も極めて低い人物だが、畳の上で死ねただけでなく、子孫も将軍職を継ぐなどして繁栄した。

 尊氏の享年は54と、この時代としては平均的だが、曲がりなりにも成功者としての生涯を送れたことは事実である。
 となると、その神輿(みこし)を担いだ誰かを悪人に仕立てねばならない。
 まずは弟の直義(ただよし)である。この弟こそ実質的な幕府の首班であり、しかも、兄弟対立の末に毒殺されるという、悲劇的な最期を迎えるため、悪役にはもってこいである。
 ところが直義は、政治家として優秀なことこの上なく、その人格は清廉潔白、しかも実直で兄思いの「いい奴(やつ)」だったのである。
 そこで引っ張り出されたのが、高師直である。
 高師直の出身母体である高一族は、足利家の家宰を務めてきた家柄で、父祖代々、足利家当主を補佐する立場にあった。
 後醍醐帝の倒幕運動において、師直は直義と共に、尊氏の尻を叩(たた)くようにして幕府方から宮方に転じさせた。さらに師直は、足利軍を六波羅探題攻略の主力とし、建武新政権が樹立されると、尊氏の名代(みょうだい)的立場として政権の中枢を担う一人となった。
 しかし建武新政権が、公家や寺社といった既得権益層を擁護し、武士や民の信望を失っていくのを見ていた師直は、いち早く建武新政権から離脱し、新たな政権の樹立を目指す。

 こうした先見の明は直義にもあり、この時点では、尊氏・直義・師直の3人は歩を一にしていた。
 ここから始まる南北朝の争乱においても、師直と弟の師泰(もろやす)の軍事的貢献は抜群で、足利政権内において、師直一派は確固たる地位を築いていく。
 それでは師直の率いる高軍は、なぜ強かったのだろうか。
 当時、足利氏や新田氏のような大勢力は、一族・直臣(じきしん)・傘下国人(こくじん)から成るあいまいな軍制を布(し)いていた。彼らは規模の大小こそあれ、それぞれ棟梁(とうりょう)を頂き、ユニット単位で戦っていた。すなわち進むも引くも棟梁次第なのである。
 ところが、こうした体質のままでは、規模の大きくなった南北朝時代の合戦を勝ち抜けない。
 そこで師直は、御家人の庶子層、非御家人、さらに悪党と呼ばれる農民上がりの新興武士層を集めて軍団(一揆)を編制、兵種別編制に近い戦い方をしている。
 これが高軍の強さの源である。(作家・伊東潤)
【用語解説】高師直
 こうのもろなお 生年不詳。代々、足利氏の家宰を務める家に生まれる。倒幕戦争から建武の新政の崩壊まで、一貫して足利尊氏に従って活躍。新たに成立した室町幕府では将軍家の執事となり、権勢を振るう。南朝の有力武将を次々と討ち取るが、幕府内部で尊氏の弟・直義との路線対立が深刻化し、軍事衝突(観応の擾乱(じょうらん))。観応2(1351)年、直義軍との戦いに敗れて討たれた。
【プロフィル】伊東潤
 いとう・じゅん 昭和35年、横浜市生まれ。早稲田大卒業後、外資系IT企業勤務、コンサルタントなどを経て、平成19年に「武田家滅亡」で文壇デビュー。25年、「巨鯨の海」で山田風太郎賞受賞。
 ※本連載の完全版は月刊「J−novel」(実業之日本社)で連載中です。

*2014.06.26 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/140626/lif1406260032-n1.html)



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内 容 ニックネーム/日時
共著だけど伊東潤の「決戦!関ヶ原」読もうかな。伊東潤はIT企業つとめてて(どこだかわからない)、オリンピック(ソウル)アマチュア・ウィンドサーファーで国内8位だったりする。
井出浩司
2015/06/20 07:09

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