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zoom RSS 【敗者烈伝】〜西郷隆盛(下)「明治6年の政変」で決まった敗北

<<   作成日時 : 2015/06/14 17:04   >>

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 産経新聞で作家の伊東潤さんが日本史の敗者に光を当てる素晴らしい歴史エッセーを連載しています。

 明治6年8月17日、土佐派の支持を得た西郷隆盛は、閣議において正式に朝鮮派遣使節に任命された。西郷は板垣退助への手紙で、「生涯の愉快此(こ)の事(こと)に御座候」と謝意を表している。
 19日、太政大臣の三条実美(さねとみ)が西郷の使節決定を天皇に上奏(じょうそう)すると、天皇は即座に了解したが、「岩倉具視(ともみ)の帰国を待って最終決定すべし」との回答を下した。
 9月13日、岩倉らが帰国し、10月14日、再び閣議が開催された。
 岩倉、大久保利通(としみち)、木戸孝允(たかよし)ら外遊組は、財政難から派兵には反対である。
 この席で大久保は、使節派遣によって万が一、開戦した場合の不利益を7つ上げた。
 最も重要なのは、政府財政は戦費負担に耐えきれず、それを人民に押し付ければ、各地で暴動が起こるという点にあった。さらに大久保は、欧米列強との条約改正に備えて国権を確立し、国内体制の整備を優先すべしと主張した。
 ところが、西郷は「それは論点がずれている」と言い張る。
 西郷は「使節派遣の目的は日朝両国の交誼(こうぎ)を厚くするためであり、開戦など考えようもない」と反論した。
 これにより、ほかの参議も西郷を支持せざるを得なくなり、西郷使節の派遣は本決まりとなる。
 怒った大久保は、即刻、参議を辞した。
 この時、大久保の辞職に驚いた三条が、心痛のため病となり、太政大臣の職務である天皇への上奏ができなくなった。

 ほかに適任者もいないため、その座に岩倉が就くことで、一気に雲行きが変わる。
 22日、西郷、板垣、江藤新平、副島種臣(たねおみ)の4参議(後藤象二郎は欠席)は、岩倉邸に押しかけ、天皇への上奏を促した。ところが岩倉は、「自分は前任者とは別人なので、知らない」と言い張る。
 岩倉の主張は、明らかに「太政官職制(だじょうかんしょくせい)」違反である。
 これには、法の番人である江藤が怒った。
 しかし岩倉の違法行為に対して、9月、西郷は抗議一つせず辞意を表明する。西郷に同心する4参議(板垣・江藤・副島・後藤)は、天皇の裁可が出るまで待つよう押しとどめるが、西郷の決意は変わらない。
 天皇の裁可を待つ4参議に対して、天皇は「10月15日の閣議決定を支持しない」、つまり岩倉を支持する意思を明確にした。
 20歳を過ぎたばかりの天皇は、すでにこの時、岩倉に言いくるめられていたのである。法治主義の観念が十分に行き渡っていなかった当時、いかに江藤が騒いだところで、天皇の意思は絶対である。
 西郷は10月23日、正式な辞表を提出する。
 これにより、西郷を支持する陸軍少将・桐野利秋(としあき)、同・篠原国幹(くにもと)ら鹿児島県出身の近衛士官の大半が辞職し、大久保による「有司専制(ゆうしせんせい)」体制が確立された。
 これが西南戦争の引き金になる。

 本稿では、西南戦争における薩軍の戦術的失敗について述べるつもりはない。あくまで西郷の勝負どころは、明治6年の政争にあり、それに敗れた時点で西郷の下野は決まった。すなわち西郷は敗者となったのである。
 しかし西郷とて、下野したからといって、自らに死が迫っているとは思ってもいなかった。農作業でもしながら、のんびり余生を送ろうとでも考えていたに違いない。
 しかし不平士族たちの西郷への信望は、宗教的なまで肥大化しており、そのまま西郷を、一村夫子(そんぷうし)として捨て置いてはくれなかった。
 信奉者たちは私学校を設立し、多くの若者を育成すると同時に、西郷の神格化を進めた。彼らの心の拠(よ)り所は西郷であり、西郷ある限り、たとえ10倍する政府軍を相手にしても、負ける気がしなかったのである。
 かくして西郷は、やむにやまれず立ち上がり、そして敗れた。
 西郷は、期せずして肥大化していった自らの虚像にのみ込まれ、敗者となったのである。
 敗者という言葉が最も似合わない男でも敗者になってしまうのが、歴史の不思議であり、運命の恐ろしさである。
 次回「高師直(こうのもろなお)」は6月26日に掲載します。

*2014.06.05 産経新聞より
(http://www.sankei.com/life/news/140605/lif1406050023-n1.html)

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伊東潤来てるね。読みたい本が何冊かあります。
井出浩司
2015/06/14 21:26

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