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zoom RSS 【石野伸子の読み直し浪花女】〜川端康成の魔界(8)伊豆の踊子“美神”から「非常の手紙」

<<   作成日時 : 2015/05/09 22:32   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが川端康成についての素晴らしいコラムを連載しています。

 川端康成は女性を書き続けた作家だ。当然、実人生で出会った女性が作品に投影されただろう。
 谷崎潤一郎が松子夫人に「芸術のための御寮人さまでなく、御寮人さまのための芸術です」と熱く手紙につづった通り、多くの作家にとって創作の源、いわゆる美神(ミューズ)は必然だ。川端の美神は誰なのか。
 有名な「伊豆の踊子」、あるいは「雪国」には実在のモデルがいたことはよく知られている。「伊豆の踊子」は一高時代、旅先で出合った旅芸人の一座にいた少女。「雪国」は30代半ば、何度も滞在した越後湯沢温泉の芸者との付き合いがベースになっている。
 しかし、作品はモデルをそのまま描くことではない。川端作品に繰り返し登場し、創作の源になった「美神」という意味で研究者たちが注目する女性に伊藤初代がいる。初代は「みち子もの」といわれる一連の作品に繰り返し登場するだけでなく、伊豆の踊子へその面影が投影されたとされる。
画像
川端康成の永遠の少女像が投影された「伊豆の踊子」。何度も映画化された=昭和38(1963)年、主演の吉永小百合と

 昨年夏、この伊藤初代から川端にあてた書簡と川端が初代にあてて書いた未投函(とうかん)の書簡が発見され、大きな話題になった。その際のキャッチフレーズも、「伊豆の踊子の原点の女性」だった(文芸春秋2014年8月号)。
 初代と川端は、東大近くにあるカフェの従業員と客として出会った。川端20歳、初代はまだ13歳という少女だった。初代は幼いころ母を亡くし各地を転々とした末にカフェのマダムに拾われるようにして出会い、養女となった。愛らしい少女でマダムにも、また客の学生たちにも人気のアイドル的存在だった。川端も強くひかれた。
 しかし2年後、マダムが再婚して台湾に渡ることになり、店は閉鎖。初代はマダムの姉の嫁ぎ先、岐阜県の寺に預けられることになる。川端は友人とともにその初代をたずねて岐阜へ行く。友人の後押しもあり、思いを告白し、初代からもよい返事をもらって川端は結婚の意思を固める。帰京後は菊池寛に借金をして新居の用意もしている。
 しかし、事態は急転する。初代から「私にはある非常がある。それを話すなら死んだ方がまし」という衝撃の手紙が届き、2人の関係は途絶する。
 「非常。非常。非常とは何だ」

2人のやりとりは、「南方の火」「篝火(かがりび)」「非常」「彼女の盛装」などの短編に記されている。22歳と15歳。まだ手を握ったこともないような関係だが、失恋は川端を長く苦しめた。
 川端は初代のどこにそこまでひかれたのか。結婚を急いだ理由を「南方の火」ではこう書いている。
 「夫と妻になることではなかった。二人が二人とも子供になることだった」
 つまり親を早くに亡くした川端と、家庭の味を知らない薄幸の初代。子供らしい日々がなかった2人は結婚によって2人だけの王国をつくり、子供時代を取り戻す。まるでままごとのような結婚願望なのだ。
 後の魔界の住人とは思えない幼さ。
 先の雑誌の特集で、川端康成記念会理事長の川端香男里氏は「川端康成と永遠の少女」として特別寄稿している。その中で、川端本人は「非常」の実態を事件の2年後にはほぼ●んでいただろうと書いている。噂を日記に記している。「千代は西方寺にて僧に犯されたり」
 ままごとのような結婚を夢見た2人の前に立ちふさがった醜い現実。作家は初代の不幸に心を痛め、2人の不運を呪っただろうか。
 初代はそれから10年後、昭和7(1932)年に川端の自宅を訪ねているが、すでに川端の心は離れていたことが後の作品などで推察される。初代の清い思い出は「伊豆の踊子」にそそぎこまれた。すでに現実の初代は川端の美神ではありえない。
 ではその後、川端の美神を受け継いだ女性はいたのだろうか。
 「それは血縁の女性ではないか」というのは川端文学研究者の森本穫さんだ。

昭和18年春、川端夫婦は養女政子を迎える。母方の実家、黒田家につながる少女だ。川端43歳。政子11歳。
 その経緯を川端は昭和18年から20年にかけて断続的に発表した作品「故園」(未完)に書き残している。さらに養女のその後の物語として「天授の子」を昭和24年に発表している。
 さらに、養女と縁のある黒田家の女性への思慕。
 川端の美神はどう描かれているのか。果たしてその美神が魔界への橋渡しとなったのか。彼女たちはみんな大阪生まれの女である。   =続く


*2015.03.20 産経新聞関西版より
(http://www.sankei.com/west/news/150320/wst1503200023-n1.html)

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ま、確かに小説にモデルはいるよね。同級生で小説を書いてる人間がいるが、
小説書いたり、バンドやったり、ま、女にもてようと思ってるんだろうな。ちゃんと仕事した方がいいです。
井出浩司
2015/05/10 06:37

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