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zoom RSS 【石野伸子の読み直し浪花女】〜川端康成の魔界(1)日本初ノーベル文学賞4年後に自殺 

<<   作成日時 : 2015/03/22 13:44   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが川端康成についての素晴らしいコラムを連載しています。
 日本人初のノーベル文学賞受賞者、川端康成は正真正銘大阪生まれ、大阪育ちだが、あまり大阪の作家という印象がない。
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ノーベル賞を受賞し笑顔で会見する川端康成=昭和43(1968)年10月17日、神奈川県鎌倉市

 ひとつには早くから故郷を出て、ふるさとには帰らなかったこと。大阪を舞台にした作品が少ないこと、大阪についてあまり言及していないことなどがあるが、まったくないわけではない。
 とりわけ本人が文学の出発点として位置づけ、50歳のときに自ら編集した全集(新潮社刊全14巻のち16巻に増補)の最初に置いた「十六歳の日記」、あるいは戦後の川端文学の出発点ともいわれる「住吉」3部作などは大阪の地、風土、文化なしには成立しなかった。
 果たしてそれはどんな世界だったのか。
 川端作品の人気は高く、いまも多くの研究が続けられているが、近年、川端文学を解読するキーワードとしてひんぱんに登場するのが「魔界」という言葉だ。
 今年5月、文芸批評家で鎌倉文学館館長の富岡幸一郎さんが書いた本のタイトルは「川端康成魔界の文学」(岩波書店)。同じく今年9月、川端康成学会理事で元賢明女子学院短大教授、森本穫(おさむ)さんが長年の研究をまとめた上下巻4000枚の大著も「魔界の住人 川端康成その生涯と文学」(上下巻・勉誠出版)と題されている。
 川端康成の出身地・大阪府茨木市には1985(昭和60年)に市立川端康成文学館ができている。勤続20年目となる田中洋子館長は「そうですね。魔界は最近とくに研究者の間で重要視される言葉になっています。ことし開いた文学講座でも魔界という言葉が論議されました」と話す。
 「魔界」という言葉は突然、イメージとして使われているわけではない。
 作家本人が「みづうみ」「眠れる美女」などの作品中に登場させているし、1968(昭和43)年、ノーベル賞授賞式での有名な記念講演「美しい日本の私」にも「魔界」という言葉を用いている。
 所有している一休の書に触れ、この1行書きの「仏界入り易く、魔界入り難し」という言葉に強くひかれ、揮毫(きごう)に好んでこの言葉を書くと話して、こう続ける。
 「意味はいろいろに読まれ、またむづかしく考へれば限りがないでせうが、仏界入り易く、につづけて魔界入り難し、と言ひ加へた、その禅の一休が私の胸に来ます。魔界なくして仏界はありません。そして魔界に入る方がむづかしいのです。心弱くてできることではありません」

 梅原猛は早くに「魔界」に注目した川端論を展開しているし、研究書としては1987(昭和62)年に先の森本さんが「魔界遊行−川端康成の戦後」(林道舎)を、また川端研究者の原善さんが「川端康成の魔界」(有精堂)という本を出版している。
 魔界とは何なのか。いつから川端康成は魔界にひかれるようになったのか。
 研究者によって解説は当然変わってくるが、先の著作「魔界の住人」で森本さんは、かねて自分は魔界をキーワードとして「みづうみ」をはじめとする戦後作品を論じてきたが、「住吉」連作こそ川端が魔界に深く踏み込んだ第1作であること。さらに「十六歳の日記」で描いた世界こそ魔界の源、「魔界の淵源」であると確信するようになったと記している。
 大阪に深くかかわる作品がいずれも川端康成をひもとくキーワードと深くかかわっていることになる。なんと興味深いことだろう。
 幻想的な世界へのこだわり、ノーベル賞受賞4年後の自殺、栄光とスキャンダルにまみれ容易に近づくことを許さない印象が強い文豪。その世界に、今回はこの「魔界」という言葉をキーワードに近づいてみよう。
 まずは「十六歳の日記」から。
 この作品は、文字通り、川端康成が16歳(かぞえ)のときの日記をもとにした作品だ。日記をもとに後年書いたものではない。日記そのもの、いや日記というより、やはりひとつの作品といえるだろうか。川端が府立茨木中学(現茨木高校)3年の時、祖父が亡くなる直前の様子をありのまま描写しておこうと意識的に観察し写し取った文章だ。「一見素朴に見えて実は冷徹な少年の目に、氏の小説家としての出発を見出す」と三島由紀夫は書いている(中央公論社刊「日本の文学川端康成」解説)。

 1歳で父を亡くし、2歳で母と死に別れ、引き取られた祖父母の家で7歳のとき祖母を見送り、その後2人暮らしを続けてきた、たった1人の肉親との別れ。以後、川端は孤児として生きることになる。過酷な人生のふちに立ったとき書き残した文章には透明なすごみがある。   =続く

*2014.12.20 産経新聞関西版より
(http://www.sankei.com/west/news/141220/wst1412200006-n1.html)

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いよいよ川端康成始まりましたか。僕は湯川秀樹が好きなんだけどね。関係ない?
井出浩司
2015/03/24 21:47

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