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zoom RSS 晶子の執着(16)女学校出が磨いた「想う能力」 「お化け帳」と鉄幹の存在

<<   作成日時 : 2013/08/06 22:04   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 与謝野晶子は興味深い。そろそろまとめに行きたいのだが、書きたいことが次々出てきて、この項、筆を置くことができない。

 晩年に入る前にひとつだけ、なぜ晶子は母性保護論争に見るような、時代を超越したグローバルな視点を持ちうることができたのかその点にこだわりたい。

 晶子は商家に育ち、地方の女学校をでただけの学歴だ。例えば論争相手の平塚らいてうや山川菊栄のように、東京のエリート家庭に育ち、日本女子大や津田塾大など当時の最高学府を出たわけではない。若くして結婚し、次々と子供を産み、生活に追われてきた。
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旅先の晶子と鉄幹。「冬柏」第4巻第5号(堺市・与謝野晶子文芸館蔵)

 そんな中で自分の思想をどうはぐくんでいったのか。

 与謝野晶子評論集(岩波文庫)を編んだ香内信子さんの解説が示唆に富んでいる。

いつでもメモできるノートを手元に

 香内さんは晶子の思想の特徴を、「生活のなかで表現し創出していったこと」にあるとする。晶子は常日頃、何か思いついたり感じたりすることがあると、すぐに書きつけるノートを手元に置いていた。それは夫の鉄幹が「お化け帳」と呼んだ雑記帳で、それに歌の習作、日常生活のこと、社会の動きや感じたことを何でも書き込み、その中から差し支えないものを選んで発表した。晶子は「想うという能力」の重要性を説く。

 「ちょっとしたことでもまじめに考える習慣を作ると感情的にのみ行動せず、理知の眼が開いて、反省し、批判し、理解する力が鋭敏になり、それを拡充すれば自己の思想、感情、行為に統一ができて破綻が減っていく」

 とかく女性は感情的動物だといわれる固定観念を打ち破るには、理性と感性の均衡を保つよう努力しなければならないとも説く。そのためには男子のために書かれた本や新聞・雑誌をできるだけたくさん読み、考えること。明治末期の晶子は猛烈な勢いでそれを実行し、さらに欧州体験で視野を広げた。わずか半年という短い時間ではあったが、鋭い感性で欧州文化を吸収し、見聞を思想化した。

 「晶子は自らも努力したように、ルネサンス期にかすかにあらわれる人間のあらゆる可能性を開花させた全的人間への接近、人間愛の創造しうる無限の力をかたく信じていた」と香内さんは書いている。

 自分の無限大の可能性を信じる鷹揚(おうよう)さ。それが大きな思想をはぐくんだといえようか。

 さらにもうひとつ、鉄幹の存在を指摘する声もある。

 国文学研究者の中周子さん(大阪樟蔭女子大学教授)は、「鉄幹はもっと評価されるべき。晶子の活躍が単に短歌にとどまらなかったのは鉄幹がいたから。晶子の多彩な業績、後世の名声は鉄幹の存在があったればこそ」という。

 2人の間にはいろいろ感情のもつれはあった。パリ行きの費用の捻出など「夫を養った妻・晶子」という見方も多い。しかし、2人はお互いの才能を認め合い、対等というより「自分より優れた存在」として意識できた珍しいカップルだったとみる。

 中教授は、晶子の書簡を分析してその筆跡に注目する。晶子の書簡には鉄幹の代筆が多くあることが伺える。そのありようをみると、2人の考えがいかに一心同体であるかに思いがいたる。日頃、生活をともにしながら、鉄幹が何かについて感想をもらす。それに晶子が答える場面もあるだろう。そうしたやりとりを通じて、晶子が時代の思想を自分のものにしていく過程が少なからずあったのではないか。

 例えば、作家の田辺聖子が、夫の考えをカモカのおっちゃんとしてうまく取り込んで自分のものにしたように。

 これは面白い視点だ。晶子の評論がいわば鉄幹との共同作業であるとしたら。これは2人の関係に新たな光を当てるきっかけになりはしないか。

 最初に出会ったとき、鉄幹は晶子にこんな歌を送っている。

 「星の子のふたり別れて千とせ経て たまたま逢へる今日にやはあらむ」

 天上界の星たちが、天上で別れてから千年を経て地上で再会したのだ、なんて。なんたるロマンチシズム。

 「読まれた当初は軽い挨拶(あいさつ)の歌だったかもしれないが、くしくも2人の類(たぐい)稀な本質と運命的出会いを予感した歌といえるでしょう。2人の絆は強く、必然的なものだったのです」と中教授は解説している。


*2013.06.18 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130618/wlf13061816300019-n1.htm)

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
写真が衝撃的でした。御宿町・月の砂漠記念公園のらくださんと同じ頃ではないか・・。
井出浩司
2013/08/07 12:02

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