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zoom RSS 晶子の執着(15)母性保護論争 真の自立、ワーク・ライフ・バランスを説く

<<   作成日時 : 2013/07/28 16:29   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 大正2(1913)年、パリでヨーロッパの息吹に触れ、それぞれに大いにリフレッシュして帰国した与謝野晶子と鉄幹だが、その後の社会的立場は大きく分かれる。

 晶子への原稿依頼はますます殺到し、女性の社会的リーダーとしての発言を求められる機会が増える。
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文化学院の生徒らと。後方で階段の手すりに手をかけているのが晶子(堺市・堺市文化館与謝野晶子文芸館蔵)

 一方の鉄幹は、久々に詩歌集「鴉と雨」を出すもののはかばかしい反響はない。

 「いたましく駱駝(ラクダ)の如く膝折りて痩せさらばへる我れを見に来よ」

 とは、つらい歌だ。

 大正3年暮れには、夫婦げんかのはてに家出したり(鉄幹の方が)、翌4年には周囲の反対を押し切って京都から衆議院議員に立候補して落選したり、プライドと現実のはざまで葛藤する姿をみせるが、やがて落ち着きをみせる。大正8年には森鴎外の推薦で慶応義塾大学教授に就任し、大正10年には晶子とともに「文化学院」の学監となった。昭和2(1927)年には、東京・荻窪に念願の家を持ち、それなりに家庭が安定してきたことを思わせる。鉄幹40代から50代にかけての歩み。

 一方の晶子は、成熟期を迎えていた。30代から40代にかけて猛烈に仕事をしている。夫の苦悩と葛藤、諦観をそばで見守りながら、次々学齢期を迎える子供たちの育児・教育に気を配り、求められれば何でも書いた。

 詩、童話、歌の解説、教育論から女性論、社会評論まで幅広いテーマで執筆し、女性参政権まで筆は及んだ。中で、有名なのが後々まで話題となる「母性保護論争」だ。

 発端は大正5年、晶子が雑誌「太陽」2月号に発表した文章で、スウェーデンの思想家・エレン・ケイを母性中心主義と批判した。

 これにすぐさま反応したのが平塚らいてう。エレン・ケイを日本に紹介した自負もあり、晶子のエレン・ケイ解釈は間違っていると容赦なく批判した。さらに社会主義の論客としてデビューしたばかりの山川菊栄が参戦。

 これが前哨戦となり、2年後の大正7年には、晶子が婦人公論に書いた母性保護をめぐる文章に再び、らいてうが反論。またまた山川菊栄や、新たに良妻賢母の立場から山田わか子が加わり、翌8年にかけて論壇をにぎわせた。それまであまり例のなかった女性たち自身による女性の生き方をめぐるシリアスな論争は、近代女性史の中でもひとつのエポックとなる出来事になった。

 これについては何冊も本が出され、時代によって発言の評価も分かれるところだろうが、近刊では歌人の松村由利子さんが書いた『与謝野晶子』(2009年中央公論新社)が、元新聞記者らしい現代的視点を加えて興味深い。

 松村さんは「母性保護論争の勝者は誰か」という一節で、晶子の発言にこそ時代を超えた女性解放の理想郷がみえる、とこう主張する。

 育児休業法もできた現代においては一見、母性保護を訴えたらいてうが勝者のようにみえようが、晶子の発言を丹念に追っていくと実に革新的。「むしろ父性を保護せよ」では当時誰も指摘していないワーク・ライフ・バランスの問題を提起し、人はただお金のために働くのではない。誇り高く生きるためにこそ、女も働くべきだし、そこに初めて自由な男女関係が成り立つのだ、というのびやかな発想をみる。

 晶子の徹底した自立精神には、「町人の娘」としての誇りがあるという。なぜ、晶子はかたくななまでに国家による経済的母性保護を否定したのか。

 かつて「君死にたもうことなかれ」と詠んだように、そこには「お上嫌い」がある。国家への抜きがたい不信がある。一方のらいてうは高級官吏の娘。国家側に立つ精神がどこかにあるのではないか。

 論争の発端となったらいてうの反論のタイトルは「母性の主張に就いて与謝野晶子氏に与ふ」。当時、晶子は37歳、らいてうより8歳年上で、歌人としても評論家としても名をなした先輩に対して「与ふ」とはいかにも居丈高。しかも、5年前の明治44(1911)年には、「青鞜」創刊号に「山の動く日きたる」で始まる見事な巻頭詩を晶子に書いてもらい、大いに誌名を上げた恩人でもあるのに。

 「私は女子の生活が精神的にも経済的にも独立することの理想に対して、若い婦人の中の識者から反対論が出ようとは想像もしませんでした」(「平塚さんと私の論争」)と述べているように、晶子はこの論争に少々くたびれたようだ。

 大正10(1921)年、「文化学院」の学監となり、自由教育の教育者として熱意をそそぎ、夫婦で盛んに旅にでて歌をつくる中年期に入っていく。


*2013.06.10 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130610/wlf13061016300012-n1.htm)

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コメント(1件)

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女性のリーダというのはいつの時代もいるんだね。いまだと江角マキコか。
井出浩司
2013/07/28 21:15

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