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zoom RSS 晶子の執着(14)鉄幹を渡欧させ…子供7人残し追随「雛罌粟」

<<   作成日時 : 2013/07/25 22:07   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 夫の回生と夫婦関係の修復を願って、与謝野晶子が起死回生の一打を放ったのが、鉄幹のパリ行き計画だった。
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晶子と鉄幹。2人は晩年あちこちを一緒に旅した。高松にて=「優勝者となれ」掲載(堺市・与謝野晶子文芸館蔵)

 芸術の都パリは憧れの地だった。「明星」でもたびたび、ヨーロッパの小説や詩、美術が紹介され、その中心にパリはあった。

 晶子は熱心に鉄幹にパリ行きを勧める。一方で金策に走った。すでに7人の子供を抱え、普段の暮らしさえ十分に立ちゆかない生活。そんな中でどう費用を工面するか。

 こんなとき、商人の娘だった晶子の才覚がものをいう。新聞連載の原稿料を前借りしたり、金屏風(びょうぶ)に百首の歌を書いて限定販売するなど、懸命な金策を練った。多忙な執筆と相次ぐ出産で身体はぼろぼろになっていたはずだが、事態打開への希望が晶子を駆り立てていたのだろう。

 明治44(1911)年11月、ついに鉄幹のパリ行きが実現した。神戸から門司、上海、シンガポール、スエズ運河をへて1カ月余りの船旅。

 鉄幹は船の停泊先や到着したパリから頻繁に晶子に便りを書いた。息がつまるような夫との生活にケリをつけ、期待通り生き生きとした夫の様子に、晶子はほっと一安心しただろうか。

 いやいや、ここが晶子の晶子たる由縁。なんと晶子は夫のいない空虚感と寂しさに胸かきむしる思いに陥るのだ。

 男ゆくわれ捨てゝ行く巴里へ行く 悲しむ如くかなしまぬ如く

 思いがけぬ夫恋しさ。涙とともに歌があふれる。

 君こひし寝てもさめてもくろ髪を梳(す)きても筆の柄をながめても

 さて、鉄幹という人の面白いところは、無理に無理を重ねる妻の手でパリ計画が練られると、もろ手を挙げてではなかろうけれどもその計画に乗り、自身もフランス語を学んだりしてパリ行きに期待することだ。そして実際に現地につくと、生き生きと新生活を楽しんだ。

 それだけなら単に脳天気な自分勝手な男ということになろうけれども、現地から晶子にあててしきりにパリに来るよう促している。「ぜひともパリで一緒に見聞を広げよう」

 この度量の広さ。おおらかさ。しみったれた男ではこうはいかない。もっとも7人の子供はどうする、金策はどうする、といった現実問題は度外視できる夢想派ならではの発想だが。

 晶子の心はパリに飛ぶ。そうなれば、ふつうの人ではないのだ。周囲の協力態勢が整う。7人の子供たちは鉄幹の妹の家に預けることになり、洋行費は大阪の実業家で与謝野家の支援者である小林天眠らが工面して、翌年5月、晶子はシベリア鉄道経由でパリに向かった。

 神戸で鉄幹を見送って半年後。2人はパリで再会を果たす。

 三千里わが恋人のかたはらに柳の絮(わた)の散る日に来たる

 2人はモンマルトルの丘の近くのアパルトマンに住み、パリの暮らしを満喫した。5月のパリは美しい。有名な歌が詠まれる。

 ああ皐月(さつき)仏蘭西(フランス)の野は火の色す君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟

 コクリコは春から夏にかけて真っ赤な花をさかせるケシ科の花。和名ひなげし。

 ああ麗しい5月よ、いまフランスの野原一面に火が燃えるばかりに真っ赤に広がっている。私たちもコクリコのように真っ赤な恋心が燃えているのね。

 結婚して10年。この華やかさ、手放しの歓喜。

 2人はパリだけでなくフランス各地を歩き、ロンドン、ウィーン、ベルリンにも足を伸ばした。尊敬する彫刻家ロダンにも会い、それらの体験は滞在中に新聞雑誌に発表し、また帰国後には共著「巴里より」に結実した。

 晶子にとって大きな収穫となったのは、ヨーロッパ各地で見聞した女性たちの姿だった。盛り上がる女権拡張運動、下宿近くで垣間見た娼婦(しょうふ)たちの生活、下町でたくましく生きる女性たち。島国日本では目にすることがかなわなかった幅広い人生。その後の晶子の活発な評論活動につながっていく。

 鉄幹が予想した通り、まさに晶子は「見聞を広め」、大きくなった。

 一方で8人目の子供をみもごり、子供たちへの強烈なホームシックから晶子は帰国を急ぐ。祖国は明治から大正に変わっていた。

 10月、鉄幹を置いて晶子は半年の欧州生活を終え単身帰国。鉄幹の帰国は3カ月後の大正2(1913)年1月。

 14カ月に及ぶ渡欧生活も鉄幹の仕事にははかばかしい成果をもたらさなかった。しかし、2人の関係は2人ならではの新しい段階に進んでいく。


*2013.06.02 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130602/wlf13060216000024-n1.htm)

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コメント(1件)

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僕もパリ行きたいけど、体力的に無理。この頃平気でパリ行っちゃうんだから、スゴイよね。
井出浩司
2013/07/26 20:45

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