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zoom RSS 晶子の執着(12)乱倫・淫…性愛の喜びで挑む寵児の衝撃

<<   作成日時 : 2013/07/05 21:10   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 歌集「みだれ髪」が出版されたのは明治34(1901)年8月15日。

 晶子の上京から2カ月後の出来事。私生活では妻と愛人の間を右往左往する鉄幹だが、出版人としての感性は鋭く、決断も早い。「みだれ髪」は大反響を呼び、晶子はこの1冊で、地方出身の無名の女性から、中央文壇の寵児(ちょうじ)へと躍り出た。
画像
新潮文庫の「みだれ髪」にも藤島武二の挿絵が使われ初版本の雰囲気を伝えている

 現代の一筆箋ほどの小さな縦長の紙製本、装丁と挿絵は藤島武二。表紙絵のハート形のみだれ髪を貫く矢は恋愛の矢。矢の根から吹き出す花は詩を意味しているという。「明星」の浪漫主義を見事に具現化した意匠で、現代版「みだれ髪」(新潮文庫)にも使われている。挿絵もモダンで薫り高い。

 収録された歌は三百九十九首。刊行直後から毀誉褒貶(きよほうへん)の嵐に巻き込まれた。

 「其歌詞新たにして高く、情清くして濃、たしかに一家の風格を具えたり」(高山樗牛)と一方で絶賛する人がいると思えば、「娼妓、夜鷹輩の口にすべき乱倫の言を吐きて、淫を勧めんとする。猥行醜態を記したる所多し、人心に害あり」(蘇帳生という筆名だが佐々木信綱だといわれる)などと口をきわめて罵倒する人もいた。

 これはもう、時代の寵児(ちょうじ)、というより問題児。

 斉藤茂吉は当時の雰囲気を「早熟の少女が早口にものいふ如き歌風であるけれども、これが晶子の歌が天下を風靡(ふうび)するに至るその第一歩として讃否のこえ喧しく、歌人も非歌人もこの歌集の出現に驚異の眼をみはった」(『明治大正短歌史概観』)と述べている。

 何がそれほど人々を驚かせたのか。

 入江春行氏は著書『与謝野晶子とその時代』(新日本出版社)で、ずばり「性愛というタブーに女でありながら挑戦した点だ」とみる。

 乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き

 はじめて知る性愛の喜びを、年若い女性が手放しで歌い上げる。その衝撃。性愛を隠微なものとしてでなく、すばらしいものとして描くタブー。その喜びを男でなく、女が口にするタブー。二つながらのタブーをつややかな言葉で軽やかに乗り越えた晶子に人々は仰天したのだと解説する。

 さらに、「男の反応を想定して挑発し、からかい、ときに命令口調でもの言い放つ調子に、男性たちは刺激され逆上したのだ」と解読するのは歌人の松平盟子さんだ(新潮文庫「みだれ髪」収録の評伝)。

 やは肌のあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君

 などはまさにその代表例といえるだろうか。

 「みだれ髪は近代人の自我の解放と表出を極限まで突き詰め、決定づけた歌集である。そして旧弊な世間的通念を向こうに回して、恋愛という男女関係の根本に燃えるエネルギーを噴射させ、女性の意思と感情を美的肯定的に打ち出した」と書いた後、松平さんはこう宣言する。

 「1901年に刊行されたみだれ髪は、この意味で二十世紀を拓いた歌集である」

 勝敗は時代が決した。のちに大家となった多くの青年作家や画家が、「みだれ髪」を愛読した。白秋も啄木も牧水も懐に『みだれ髪』を入れて旅に出た。青木繁も萩原朔太郎も、そっくりの歌を残した。

 晶子は「みだれ髪」を「鳳晶子」の名前で発表した。当時まだ正式な結婚が成立していなかったためで、晴れて挙式をあげるのは出版から2カ月後の10月。あけて1902(明治35)年1月にやっと入籍をはたし初めて、「与謝野姓」を名乗るようになる。

 23歳与謝野晶子誕生。

 以後、旺盛な作家活動の一方で、出産、家事、育児、「明星」の経理や雑事、と怒濤の生活が始まる。晶子の周辺は息つくひまもない。

 明治35年11月、長男出産。

 明治37年 1月 第2歌集「小扇」出版

     同 7月、次男出産

     同 9月 「君死にたもふことなかれ」発表

 明治38年 1月 詩歌集「恋衣」(山川登美子・増田雅子と共著)刊行

 明治40年 3月 双子出産

 明治41年11月 「明星」廃刊

 明治42年 4月 登美子死去

 「みだれ髪」の評判で「明星」は再び息を吹き返したものの、時代は激しく動く。文学は浪漫主義から自然主義へと動き、明星の鉄幹は世の中から見捨てられていく。一方の晶子の世評は高まるばかり。プライドの高い夫との関係はどうなるか。


*2013.05.17 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130517/wlf13051716300029-n1.htm)

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コメント(1件)

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>性愛というタブーに女でありながら挑戦した点だ」
今は、年齢も関係なくいろんな方が挑戦してますね。
井出浩司
2013/07/06 21:46

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