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zoom RSS 晶子の執着(6)恋に恋する20歳の乙女 ぶつけた激烈3人超す

<<   作成日時 : 2013/06/11 21:29   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 二十(はた)とせの我世の幸はうすかりき せめて今見る夢やすかれな(『みだれ髪』)

 こし方はいとも暗しその中に 紅き灯もてるわが二十(はたち)の日(『春泥集』)
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晶子の生家近くの宿院。寺も多く、晶子が心を寄せた河野鉄南の寺も近かった(堺大観より)

 晶子は20歳になっている。すでに女学校を出て4年。家業を切り盛りしているが、親としてはそろそろ片づいてほしい年頃。しかし、旧弊な親が決める相手にはとうてい満足できそうにない。自身で20歳を歌った歌はまさに夢見る乙女、取り巻く環境に背を向け、ひたすらまだ見ぬ何かを求めている。何か、とは文芸の灯火、そして源氏物語の姫君のような恋。

 折しも、晶子の周辺には現実の若い男性の姿がちらほらと登場するようになっていた。旧態依然の花鳥風月に固執する「堺敷島会」の歌づくりに飽き足らなくなり、文学青年たちがつくった「浪華青年文学会堺支部」に入会したのは20歳のとき。会の機関誌「よしあし草」に投稿を始めるようになって、地元の文学好きの青年と面識をもつようになった。

 22歳で鉄幹と出会うまでの2年ほど、晶子が書いた書簡があちこちに残っている。熱い恋心をぶつけたものもある。その相手は判明しているだけで3人。

 まず最初の1人は森崎富寿。晶子が異性に宛てた最初の手紙といわれる。森崎は堺市の電話局勤めをしながら陸軍士官学校進学をめざしていた少年で、弟の友人だった。電話で古典などの文学談をしたような記述があるが、相手も20歳になるかどうかの年頃、淡い心を通わせただけのようだといわれる。

 晶子の激しい気性のままに、熱い思いをぶつけたのは近所の覚応寺の跡取り息子、河野鉄南だ。晶子より4つ年上で浪華青年文学会の中心メンバーだった。幼いころ堺の寺に養子に出されていた与謝野鉄幹とは竹馬の友で、この鉄南を通して運命の人・鉄幹に導かれることになる。

 晶子が鉄南に初めて会ったのは明治32年1月3日、22歳になる年の正月だ。鉄幹に会うまではまだ7カ月の月日を待たなければならない。その日、浪華青年文学会の堺支部が世話役となって堺市の浜寺公園にあった旅館で「関西文学同好会」の新年会が開かれた。その席上で初めて鉄南に会う。

 紅一点、晶子は男たちの宴席で歓迎されたに違いない。しかも、晶子の存在は機関誌でみなにも知れ渡っており、ちゃんと一人前の同人として扱ってくれる。中でも温厚で誠実さがにじみ出た鉄南に晶子は強くひかれる。以後、たびたび文を送り、30通近い文章が残されている。鉄南は節度ある態度で対応したようで物足りなさを感じながらも、晶子は徐々に激烈な文章を送るようになる。このあたり、晶子の執着がよく現れているところだ。

 「女とへだてさせ給わで、やさしくいたはり給ほる御こゑに接せし御事、世にもうれしくわすれまじきもののひとつに数へ申すべく候」

 筆をとると、あとからあとから言葉がほとばしり、心があおられる。

 「都合よろしきとき、私より御文たまはれと申すべし、それまでお待ちくだされ度く」

 とじらす余裕もすぐに消え去り、

 「よしや兄様のしもとみだるるとも、よろしく候。略。このもだゆる少女をあはれと思し、何とぞ早く何とか仰せ被下度候。二三日も御返事御まち申してもなき時は、私は死ぬべく候」

 鉄南はさぞ驚いただろうが、年よりも分別があり、慎重な性格だったようで、どうともとれるような当たらず触らずの返事を返していた。

 というのも、晶子が恋に恋する乙女であることがほどなく判明してしまうからだ。同じ文学グループの宅雁月にも同じような熱い手紙を出していることが知れる。雁月は晶子の弟の友人で、鉄南と同じく新年会で会っている。こちらも10通ほどの手紙が残されている。その中には、鉄南あてのものとほぼ重なる書簡もある。

 鉄南は苦笑したか、それとも鼻白んだか。しかし、晶子の歌に若き僧を詠んだものが多いことなどからも、鉄南への気持ちが強かっただろうと研究者はみている。

 かばかりもなよなよとせる心をば 浪華育ちの傷に思へり

 とのちに晶子の歌にあるが、どうしてどうして、ふだんは箱入り娘ではあるが、こうとなったらいちずに燃え上がる晶子の執着心がこのあたりに出ている気がする。

 恋のレッスンをしながら、鉄幹との運命の出会いはすぐそこにきている。


*2013.03.30 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130330/wlf13033016000016-n1.htm)

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コメント(1件)

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一度書いた手紙をコピペして何回も使ってた、ってわけだ。
それも今でいうラブレター。
文学少女は違うね。
井出浩司
2013/06/12 10:20

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