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zoom RSS 晶子の執着(11)まさに「みだれ髪」 鉄幹の未練を断ち斬った“罪の子”

<<   作成日時 : 2013/06/27 22:11   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 与謝野鉄幹と結ばれた日から東京に出奔するまでの半年間。歌人として熱い思いがたぎるような歌を次々と生み出す一方で、晶子はもんもんとした日々を送ることになる。
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歌集「みだれ髪」初版(堺市・堺市立文化館与謝野晶子文芸館蔵)

 相手は子供までなした妻がいる身。そんな男と一緒になることを周囲が認めてくれるはずがない。自分が進もうとする道は罪深い。そこをまっすぐに行けば親も故郷も捨てることになる。

 いや、そんな迷いはとっくに捨てている。しかし、当の相手がはっきりしないのだ。一緒になろうと約束したはずなのに、いつまでたっても上京してこいと言ってくれない。本当に妻子と別れる気があるのだろうか。

 一直線に思いをぶつけてくる女を男は少々持てあましたに違いない。鉄幹は煮え切らない態度をとっている。そもそも当時の鉄幹はとても恋人を迎える環境にはなかったのだ。別居話が出ていたとはいえ、妻であるタキノはまだ東京にいるし、「明星」出版にはタキノの父親の金銭的援助が欠かせない。

 なんとかうまく事を運べないか。

 山ごもりかくてあれなのみをしへよ紅つくるころ桃の花さかむ

 いましばらく「山ごもり」してひっそりしておいでという鉄幹からの手紙に、晶子は「いま使っている口紅が尽きるころ、私たちの人生には桃色の花が咲くでしょうか」と決断を迫っている。

 さらに鉄幹は新たな試練に巻き込まれた。「文壇照魔鏡」事件として知られる怪文書事件だ。

 それは怪文書というには手の込んだいやがらせ。「明星」をひっさげて歌壇に旋風を巻き起こした鉄幹を社会的に葬り去ろうという冊子が出版されたのだ。妻の実家から金をもらって「明星」を創刊したこと。彼を教祖のごとくあがめる青年子女に君臨していること。ことに女弟子の鳳晶子、山川登美子らと親しいこと、新派歌人は我のほかなしと傲岸不遜(ごうがんふそん)であること。事細かく書かれたことは一面の真実ではあるけれど、書きようによって大きなスキャンダルになった。

 内部に詳しいものの仕業に違いない。鉄幹は激怒し、これと思う相手を告訴し、ことが大きくなった。結局裁判に負け、噂だけが独り歩きした。「明星」の読者は激減し、脱退する女性会員が続出した。

 歌人としての一大ピンチ。しかし、事件は晶子にとっては幸いとなった。この間のドタバタに嫌気がさして、妻のタキノが離婚を決心。晶子に「私は離縁するのであなたたちは夫婦になってください」と手紙を送り、故郷・山口に帰っていったのだ。

 晶子は手放しで喜ぶ。「ゆるさせ給ふべくや つみの子この子かなしく候、おはづかしく候」と自分を「つみの子」と呼び、返信を書き送っている。

 鉄幹の頭ごしに行われた女たちのやりとりを知ってか知らずか、鉄幹は相変わらず両方の女性に熱い手紙を送っている。去られることが何よりいやな男なのだ。タキノへの未練を書いたりして晶子をやきもきさせる。

 あおられたりとどめられたり。乙女心は常時翻弄された。晶子は食事ものどを通らないほど憔悴(しょうすい)し、家族を心配させた。店の番頭との結婚をすすめられたりするが、むろんそんなことで揺れ動く晶子ではない。そのあたり、親の進めるままの結婚をした山川登美子とは執着心が違う。それとも一線を越えてしまった乙女の一念だろうか。

 ついに6月、晶子は家をでる決心する。「発狂するのではないか」と心配した母親は暗黙の了解をしていたという。

 狂ひの子われに焔の翅(はね)かろき百三十里あわただしの旅

 のちにこの出奔を自身でうたった歌。恋に狂った私には情熱という翼があるので、堺から東京への百三十里など決して遠くないのだ、と。

 「かばかりもなよなよとせる心をば浪華育ちの傷に思へり」と自身の優柔不断さをうたった晶子。しかし、現実は「なよなよ」どころか実にいちず、尋常ならざる執着心の持ち主なのだ。

 ところが、やっとたどりついた鉄幹宅で晶子は、自分が招かれざる客であることを思い知らされる。参加した新詩社の会合では常に冷たい視線を浴びせられ、故郷からは帰京をうながす手紙が届き、鉄幹は堺へ帰るよう説得したりする。なんのために命がけで上京したのか。

 こうなると晶子は強い。てこでも動かない。そして2カ月後、「みだれ髪」の出版で鉄幹にも世間にも自らを認めさせるのだ。


*2013.05.02 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130509/wlf13050916300030-n1.htm)

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内 容 ニックネーム/日時
人様の物かっぱらっちゃう、っていうのは昔からあったよね。
2,3年前までは「不倫はカッコイイ」みたいな風潮もあった。
こういうことやると、疲れると思うけどね・・・。
井出浩司
2013/06/28 10:01

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