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zoom RSS 晶子の執着(10)紅葉に決意、三人同宿 好敵手の冷たい足を感じて

<<   作成日時 : 2013/06/22 15:14   >>

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 産経新聞WESTで記者の石野伸子さんが与謝野晶子についての素晴らしいコラムを連載しています。

 明治33(1900)年11月、3人は京都の永観堂で紅葉を見た後、栗田山の辻野旅館に宿をとる。
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ライトアップで燃える永観堂の紅葉。晶子、登美子、鉄幹の若き男女は紅葉を見た後、宿をとる。3人の運命がそこで決まる

 27歳の妻子ある師と、21歳と20歳の未婚の弟子。若い男女3人の投宿は現代でも波紋を呼びそうな行動だが、当時もさすがにそれと親兄弟に告げて実行できることではなかっただろう。晶子にとっては女友達の山川登美子の誘いが、家族への隠れミノになった。

 それにしても、切羽詰まった思いを抱えて別れ難い弟子たちと、即座に人里離れた古都の旅館を手配できる、与謝野鉄幹の世慣れた様子もうかがえる。

 ともあれ、3人は3様に心乱れる一夜を過ごした。

 その心境やいかに。

 2人の女性たちはそれぞれ同時進行ドキュメンタリーのように折々の心境を歌に詠み「明星」に発表しているので、同時の心境は歌で知ることができる。

 直後の「明星」11月号に発表された晶子の歌。

 友のあしのつめたかりきと旅の朝 わかいわが師に心なく云ひぬ

 師匠の鉄幹と友人の登美子と同宿したこと、登美子と同じふとんに寝て冷たい足を実感したこと、それを翌朝、師に告げたこと。3人の生々しい様子が歌われている。

 一方の登美子が同じ号に歌った歌。

 それとなく紅き花みな友にゆづり そむきて泣きて忘れ草つむ

 意に染まぬ結婚をするため帰郷を迫られた登美子。「紅き花」、つまり歌の世界の栄光も、恋する師匠の心もすべて友人の晶子にゆづり、あきらめと忍従の道をいく決意を語る。自身の人生へのあきらめと悲しみがせめぎ合う切ない歌だ。

 登美子の敗北宣言。ライバルとして張り合ってきた晶子は、どう感じていただろう。

 三人(みたり)をば世にうらぶれしはらからと われまづ云ひぬ西の京の宿

 うらぶれていたのは登美子と、妻の実家から絶縁宣言を受けて傷心の鉄幹だが、2人の激情を晶子も共有していたのは間違いないだろう。

 作家の田辺聖子は「千すじの黒髪」の中でこう記述している。

 「登美子は結婚をひかえ、心がみだれ、晶子は登美子の脱落を知って異常な恋の昂ぶりを覚えたかもしれない。鉄幹もまた、誰にもまして二女性に心が傾き、登美子にともなく晶子にともつかず、なだれおちてゆく気持ちを、押さえがたかったろう」

 この栗田山での三人同宿の一夜を、あるいは猟奇的に詮索する人もあるが、そういう迂愚(うぐ)な好奇心や低俗な推察はこの三人の本質とはなんのかかわりもない、とあえて書いている。

 恋の勝者と運命づけられて、晶子には心に余裕があったといえるかもしれないが、同じ歌をめざす女性として、友人の才能を惜しむ気持ちは本心からのものだった。

 翌年夏に出ることになる「みだれ髪」の一章「白百合」は、ほぼ全編登美子に当てられたオマージュだ。

 新詩社では主だった女性会員をニックネームで呼び合っており、白百合は登美子の雅号。命名者は鉄幹たちで晶子は「白萩」。

 おもひおもふ今の心に分ち分かず君やしら萩われやしろ百合

 人の世に才秀でたるわが友の 名の末かなし今日秋くれぬ

 百合の花わざと魔の手に折らせおきて拾ひてだかむ神のこころか

 しかし、恋の勝利者は一目瞭然なのだ。

 翌年1月、鉄幹は再び大阪にやってきた。堺・浜寺をはじめ神戸など関西各地で歌会を行っているが、9日からの3日間、足取りが消えた。晶子と2人、再び京都・栗田山の辻野旅館に宿をとり、2人は心の高まりのまま時間をともにしたのだ。

 登美子を交えて「世にうらぶれた」一夜を過ごしてほんの2カ月後の出来事。すでに登美子は故郷で結婚している。鉄幹は晶子をつれて京都の両親の墓参りに行ったりしている。

 晶子の激情があふれる。「明星」10号(明治34年1月)に60首、次の11号(明治34年3月)には一気に79首を発表した。

 乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬ ここなる花の紅ぞ濃き

 乱れ髪を京の島田にかへしあさ 臥していませの君ゆりおこす

 春みぢかし不滅のいのちをとちからある乳を手にさぐらせぬ・・・・注

 2人は名実ともに結ばれた。晶子の歌は本物の愛を知って、いよいよ独自の世界を切り開く。

 しかし一方で、妻子ある男性との恋に新たな苦悩が始まる。


注・・・「みだれ髪」321番歌『春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ』のことと思われるが、記事中では『何に』が抜けている。


*2013.05.01 産経新聞関西版より
(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130501/wlf13050116300017-n1.htm)

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コメント(2件)

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乱れ髪、とか奥深いんですね。3P**とか、そういうことだったんですかね・・・。
井出浩司
2013/06/22 22:08
このシチュエーションでは普通に想像しますよね。3人とも20代だし。
管理人
2013/06/22 22:31

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